四半期GDP成長率は通年目標に満たず
経済低迷で中国政治はどうなる?
経済基礎決定上層建築――。
筆者自身、北京大学で必修科目として履修したマルクス主義の授業などで幾度となく耳にした言葉である。端的に言えば「経済が政治を左右する」という意味で、マルクス主義理論に基づいた弁証法的な考え方である。経済情勢いかんで政治構造の行方が決まる、という中国の国情を説明する際にしばしば応用される。
ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一部都市封鎖(ロックダウン)などを前に立ち往生する中国政治経済情勢を観察しながら、この概念を想起する今日この頃だ。というのも、2022年は秋に5年に一度の党大会が開催予定の「政治の季節」である。党、国、軍の最高指導者である習近平氏(以下敬称略)にとって、経済の安定的成長が最重要課題となる。それが政治の安定と掌握につながり、強固な権力基盤の維持を保証できるからである。
足元の経済指標はなかなか芳しくない。
中国国家統計局が3月31日に発表した3月のPMI(製造業購買担当者景気指数)は49.5と前月より0.7ポイント低下。5カ月ぶりに好不調の境目である50を下回った。
3月の貿易も低迷、特に輸入の増加率は前2カ月と比べて16%減で、20年9月以来の減少(前年同月比)となった。コロナ禍における人の移動も回復していない。3月以降、国内のフライト数は大幅に減少、昨年同時期の5分の1以下、鉄道の一日平均乗客者数も通常の3分の1以下にとどまっている。
同局サービス業調査センターの趙慶河高級統計師は、「直近、国内における多くの場所で集中的な感染拡大が見られ、加えて地政学的不安要素が明白に増加したことで、わが国の企業生産経営活動が一定の影響を受けた。統計は、わが国の経済をめぐる全体的な景気水準が一定程度低迷していることを示している」と景気の低迷を認めている。
また、同局が4月11日に公表した3月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比1.5%上昇と、1月、2月の0.9%から大きく上昇。上海市などでの一部都市封鎖や、ウクライナ危機を受けた物価上昇が要因であろう。
4月7日、北京で経済の専門家や企業家を招集、経済情勢と対策について議論した李克強首相(以下敬称略)は、「昨今の世界情勢は複雑に変化しており、国内の新型コロナも感染拡大している。いくつかの突発的要素は予想を超えている。経済の安定的運行により大きな不確実性と課題を投げかけている」と指摘。ウクライナ情勢やコロナ禍をめぐる状況が予想を上回る形で影響を及ぼす中、「物価を安定させるために、食料生産、エネルギー供給、物流の円滑な運行といった肝心な点をしっかりと掌握しなければならない」と景気回復に向けて危機感をにじませた。