次期法相に
40代の韓東勲氏を指名

 尹錫悦次期大統領は、民主党が捜査権完全剥奪法案を党議決定した翌日(13日)、次期法相候補に韓東勲司法研修院副院長を指名した。尹氏は自ら記者会見室でこの人事を発表し、「法務行政の現代化、グローバルスタンダードを満たす司法システムを確立するに適任者だ」と語った。

 韓東勲氏はまだ40代であり、多くの法曹界の先輩を押しのけての指名に「破格の人事」だという声が上がっている。だが、尹錫悦次期大統領は「韓氏はさまざまな国際業務経験を持っている。絶対に破格の人事ではない」と自らの決定を擁護した。

 韓東勲氏は17年、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入事件で特別検事チームに尹錫悦氏と共に派遣されて以降、尹錫悦氏を補佐してきた。尹錫悦氏が検事総長に就任すると、大検察庁反腐敗・強力部長として「積弊捜査」を統括した。しかし、19年尹錫悦氏が曺国元法相一家に対する捜査を指揮して以降、4回も左遷され、自らも捜査対象とされたことがあった。しかし、最近「嫌疑なし」となった。

 韓東勲氏の指名を受け民主党は、「国民に対する人事テロ」だと反発、朴洪根(パク・ホングン)院内総務は「尹氏は公正ではなく、功臣を選んだ。側近を据え、検察の権力を私有化し、強大な権力を持つ検察共和国を作るという露骨な政治報復宣言だ」と指摘した。

 朴洪根氏の批判を聞く限り、文在寅政権が市民運動などの「運動圏」出身の左翼系の人々で政権の中枢を固め(韓国では「コード人事」とやゆ)、社会の不公正を一層拡大し、検察改革と称して、自らに都合のいい、新しい検察組織を作ってきたことへの反省はみじんもない。

 韓国法曹界も、検察の捜査権限については米国、日本、フランス、ドイツなどで認められた民主主義国家で共通する制度であると認めている。

 にもかかわらず、検察の捜査権限を維持することを「強大な権力を持つ検察共和国を作る」と批判する朴洪根の発言は理解し難い。むしろ、自分たちの論理で、自分たちに都合のいい、検察共和国を作ろうとしているのは文在寅政権ではないだろうか。

 次期政権で与党となる「国民の力」の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は、「法相には刀はなく、検事総長が刀を握っている」としており、韓東勲氏も「具体的な事件について(法相が)捜査指揮権を行使することはない」と政治報復論を否定している。他方、同党内には「民主党が『検察捜査権完全剥奪』を主張している状況で、韓氏を据えて真っ向から対決を宣言したものだ」とする声も出ている。