在日ロシア人排斥、ウィル・スミス擁護…日本にはびこる「正しい暴力」の幻想写真はイメージです Photo:PIXTA

ロシア人への「正義ある暴力」は悪くないと考える日本人

「ロシア」への怒りを爆発させる「正義の日本人」が増えている。

 例えば、読売テレビが4月15日に報じたところによれば、日本が好きになってロシアから7年前に来日して、大阪府内に住んでいる女性ユーチューバーの元には、こんなコメントが多く寄せられているという。

「ロシア人は詫びて死んでブタの餌になればいい」
「ロシア人全員が悪い!在日ロシア人は外出気をつけろ!」

 こういう話を聞くと必ず「こんなアホは日本人の中でもほんのひと握り」と言い訳をする人がいるが、この女性のSNSには毎日のように誹謗中傷が投稿され、これまで300人以上をブロックしてきたという。

 事実、「ひと握りのアホ」では説明できないほど多くのヘイトクライムが報告されているのだ。あるロシア食品店では看板が破壊された。またあるロシア料理店では「死ね」「ボケ」などの脅迫電話もかけられている。ネットやSNSをのぞけば、「ロシア人を皆殺しにしろ」なんてドキッとするような文言もある。

 戦争の長期化によって、「ロシア人狩り」が起きそうなムードなのだ。

 そこで、4月19日に自民党の佐藤正久外交部会長は「日本の品格も問われる」と自制を訴えた。さらに、林芳正外務大臣も次のような異例の呼びかけを行った。

「日本に住む一般のロシア人を、ロシア人であるというだけで排斥したり、誹謗中傷することは行わないように」

 ただ、現実的にこれは難しいのではないかと思っている。日本社会には、「相手に非がある場合の暴力は正当化される」という伝統的な価値観があるからだ。

 つまり、「戦争犯罪人」のプーチンを選んで増長させたロシア国民にも一定の責任があると考えるような日本人にとって、在日ロシア人への排斥や誹謗中傷は「正しい暴力」なのだ。政府にちょっと注意されたくらいでやめるとは思えない。

「日本人は暴力を正当化などしていない!いい加減なことを言うな反日ライターめ!」とキレる人もたくさんいるだろうが、この価値観をこれ以上ないほどわかりやすく浮かび上がらせた出来事があった。

 それが、ウィル・スミスさんビンタ騒動である。