虐殺を「フェイク」と言わない日本人の歪み
“狂気の独裁者”プーチン大統領とロシア軍の「蛮行」に対して、国際社会から激しい怒りの声が上がっている。
キーウ近郊のブチャでロシア軍によって住民数百人が虐殺されたという。ウクライナによれば、ロシア兵は子どもにまで拷問を行って、遺体の中にはバラバラに切断されてしまったものもあるという。また、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」によれば、女性のレイプ被害も報告されている。
NATO(北大西洋条約機構)は、これらの非道な行いはすべてロシアの責任だと非難、アメリカのバイデン大統領もプーチン大統領を「戦争犯罪」と糾弾して、法に基づいて処罰されるべきだと訴えた。
これを受けて日本国内でも、「プーチンに正義の裁きを!」とロシアへのさらなる厳しい制裁を求める声が多くなっている。あれだけ残虐な行為を目の当たりにすれば人として当然の反応だが、一方でちょっと意外な気もしている。
今回の虐殺について、ロシアは「西側諸国のフェイク」だと反論をしているが、そのような主張をされる方が日本国内でも、もうちょっといるかなと思っていたからだ。
誤解なきように断っておくと、筆者はブチャの虐殺がフェイクだなどと主張をしたいわけではない。ただ、「マスゴミ」という言葉があるように、メディアの大本営発表を懐疑的に見ている方が世の中にはたくさんいらっしゃる。ワクチンにまつわる国際的陰謀論を信じている方もいる。欧州が中心となっている世界的な脱炭素キャンペーンを「インチキ」だと攻撃している人も少なくない。
そのように疑り深い人たちが多いのだから、今回の「虐殺」のニュースに対しても、「本当のところはどうなのかな」くらいの反応があるかと思ったのだが、もしそんなことを少しでも口走ろうものなら、「日本人の恥め!ウクライナの皆さんに土下座して謝罪しろ」なんて感じで袋叩きにされそうなムードさえある。
今の雰囲気には個人的にはちょっと驚いている。日本には、西側諸国が「虐殺」と断定して現代でも戦争犯罪として語り継いでいることを、「フィクション」「でっちあげ」と全否定していらっしゃる方がたくさんいるからだ。
何を指しているのかはもうお分かりだろう。そう、南京事件である。かつての自国による虐殺は全否定するのに、なぜロシアの虐殺は素直に納得できるのだろう。