重要視される「バイリンガル・スタッフ」の存在

 常総市や茨城NPOセンター・コモンズのホームページからは、ポルトガル語・タガログ語・英語・スペイン語・中国語・ベトナム語・日本語など11言語で書かれた「外国人のための生活ガイドブック」が閲覧できる(PDFの印刷可)*11 。これは、横田さんが代表理事を務める茨城NPOセンター・コモンズによる制作で、ゴミ出しや税金納付の方法、教育・保育、福祉サービス、防災など、外国人が日本で暮らすために必要な情報を分かりやすくガイドしている。全国レベルで「やさしい日本語」が知れわたってきてはいるものの、外国人にとっての「言語の壁」は大きく、日本語以外でのアナウンスが不可欠だ。

*11 常総市ホームページ「外国人のための生活ガイドブック Gaikokujin no tameno Seikatsu Gaido Bukku」
茨城NPOセンター・コモンズ ピアサポートのホームページ▶http://peer-joso.com/cn2/documents.html#lifeguide

横田 日系外国人の方をはじめ、在留外国人の方で日本語の会話ができる人はたくさんいます。でも、漢字の多い日本語の文章をスラスラ読める人は少ないでしょう。「やさしい日本語」も広がりつつありますが、それが通じやすい人と、まるで伝わらない人に分かれます。日本のテレビ番組を見るような人には「やさしい日本語」は便利ですが、たとえば、ブラジル人の夫婦で在留年数が少ない方は、ポルトガル語以外の文字を理解するのは難しい。スマホをかざした日本語がポルトガル語に翻訳されて画面上に表れたり、YouTubeも設定を変えれば、ポルトガル語の字幕が出たりと、ITの力で言語の壁は昔よりも低くなってはいますが、国の制度に関わる公的なものや自動車保険や火災保険といったお金に関わるようなものは、きちんとした翻訳文書で伝える必要があります。中途半端な日本語の理解で契約上のエラーを起こしてしまう外国の方もいますので、これからの社会では文書の多言語化がいっそう望まれるでしょう。

 横田さんはNPO法人の代表として、日系外国人の就労先が広がる活動も続けている。はじめのいっぽ保育園の設立の目的のひとつである「バイリンガル・スタッフ」の現況を尋ねた。

横田 パート勤務で朝だけシフトに入っている方が1人いて、週3~4(回)の勤務の方が2人います。1人はブラジル、1人はフィリピンの方です。2人とも、日本の学校を卒業したわけではありません。来日して、工場や学校での通訳などで仕事をしていましたが、「保育の仕事をしたい」という思いでスタッフになってくれました。また、「保育の仕事に就きたい!」という、外国にルーツを持つ高校生もいます。はじめのいっぽ保育園で何らかのお手伝いをしていただき、ゆくゆくはスタッフになってほしいと思います。外国人の子どもたちが通う高校に「保育園に来てみませんか?」と呼びかけ、保育の楽しさを感じてもらい、保育士養成の専門学校に通うための奨学金制度を作ることも私の願いです。

 先日、近隣の保育園から、「日本の先生だけでは(外国人の子どもに)うまく伝わらないので、(はじめのいっぽ保育園の)ブラジル人の保育スタッフを派遣してくれませんか?」という相談を受けました。「週に1時間だけでもいいから……」と。そんなふうに、外国の人材が必要とされる状況になっています。“バイリンガル保育スタッフ”が各保育施設で活躍できるよう、当園がモデルを創ろうと思います。そして、それを取り入れる園が増えたらと思いますし、そうしたスタッフを配置する場合に加算*12 が付くような制度改正がなされることを希望します。

*12 1ページ目*6参照