西陣織は、二〇以上の工程から構成される

 とはいえ職人たちは、一人ひとりが個々ばらばらに美意識を磨いてきたわけではありません。互いに美意識を磨き合う仕組みが、西陣織のエコシステムの内部には存在していました。

 ます。それぞれの工程を担当する職人は、「自分さえ良ければいい」という姿勢では仕事をしていません。

1200年以続く伝統工芸、西陣織が持つDNAとは?

 それは、お互いの技能に対して尊敬の念を持ちながら、互いに負けないように切磋琢磨する仕組みです。

 次の工程を担当する職人が仕事をしやすいように、あるいは次の職人に「こんな仕事をしやがって」と思われないように、常にプライドを持って最高の仕事をしようとしてきたのです。

 その仕組みは現代のカルチャーの例で言えば、ヒップホップの「MCバトル」に近いかもしれません。お互いにスキルを見せ合って、プライドと美意識の闘いを繰り返すことによって、美意識のレベルを上げていくのです。