全世界で700万部を売り上げた学び直しシリーズ、「Big Fat Notebook」の日本語版がついに刊行! 大栗博司氏(カリフォルニア工科大学教授)「この一冊で、科学の全貌が見渡せる。中学生のころにこんな本がほしかった」、市岡元気氏(教育系Youtuber)「学校で習う理科がこんなにおもしろいなんてアリエナイ!」、吉森保氏(大阪大学栄誉教授)「カラフルで面白い。ノート風なのでa読みやすい。大人の学び直しにも最適」と各氏も大絶賛。物理・生物・化学・地学の基本を楽しく一気読みできる本として、大きな話題を読んでいる。
同シリーズの科学版『アメリカの中学生が学んでいる14歳からの科学』の発売を記念して、本文の一部を公開する。
万有引力とは
万有引力は、物体が地面に落下するときに作用する重力だけを指すのではなく、質量を持っているすべての物体に作用する引力である(万有引力は必ず引力で、反発力になることはない)。万有引力の強さは、物体の質量と、物体間の距離の両方で決まる。質量が大きいほど、万有引力は強くなる。また、物体どうしが近いほど、より強い万有引力で互いに引き合う。
万有引力がすべての物体に作用するとしたら、なぜビルの横を通り過ぎても身体が引っ張られたりしないのだろうか? 地球上にある物体どうしの間に作用する万有引力は、地球自体がおよぼす万有引力に比べて非常に弱く、いっさい感じられないからだ。
地球が太陽を中心とした軌道の上に留まっているのも、万有引力のおかげだ。太陽は質量がとても大きいため、太陽系全体に万有引力をおよぼして、地球を含むすべての惑星を軌道上に留めている。
太陽の周りを回っている惑星が太陽に引き寄せられないのはなぜだろうか? それは、太陽の万有引力が作用するとともに、惑星が横方向に運動しているからだ。
ヨーヨーのひもの端を持って、身体を中心に回転させたとしよう。君はひもを握って自分のほうに引っ張っている。それが太陽の万有引力に相当する。しかしヨーヨーが横方向に運動しているために、ヨーヨーは一定の円周上を回りつづける。
重さ
重さは、実は重力の強さを表している。重さは重力の強さと物体の質量の両方で決まる。2個の物体をそれぞれ天秤の左右の皿に載せたら、質量の大きい物体のほうが重さも重い。
質量は場所によらず一定だが、重力の強さが場所によって異なるせいで、重さは一定ではない。たとえば、月面では地球上よりも重力が弱い(重力の強さは天体の質量によって違い、月は地球よりも質量が小さいので、月面では重力が弱くなる)。したがって同じ物体でも、地球上よりも月面にあるときのほうが重さは軽くなる(約6分の1)。
重力によって地面に向かって落下する物体には、大きさが一定の下向きの加速度が生じる。地球上ではその加速度の大きさは約9.8m/s2。そのため物体を放り上げると、徐々に減速して空中でいったん静止し、その後、下向きに加速しながら地面に向かって落ちていって、最後に地面に衝突する。
摩擦力
ニュートンの第1法則によると、運動している物体は、外から力が作用しない限り運動し続ける。そこで、この本をテーブルの上で滑らせてみよう。すると、減速してやがて静止してしまう。この本に作用した力は何だろうか? それは摩擦力である。
摩擦力は、互いに表面が接している2つの物体どうしの運動を妨げる力で、必ず運動方向と逆方向に作用する。スケートボードで走っていると、路面やベアリングの摩擦によって車輪は減速する。
一般的に、ざらざらな表面のほうが摩擦力は強くなる。ふつうの紙よりも紙やすりのほうが滑らせにくいのは、表面がざらざらで摩擦力が強くなるからだ。逆に摩擦力を弱くするには、表面に潤滑剤を塗ればいい。私たちの身体の中にも摩擦力を弱くするしかけがある。ひざの関節の中にある液体だ。
空気や水も摩擦力をおよぼす。空気による摩擦力のことを空気抵抗という。鳥の羽根を落とすと、空気抵抗によって下向きの運動が妨げられて、左右に揺れ動きながら落ちていく。摩擦力は接触している表面どうしの間で働く力なので、表面積が大きい物体ほど空気抵抗を強く受ける。
そのほかの摩擦力
静止摩擦力:運動していない物体の表面どうしの間に働いている摩擦力。一方の表面の上にある分子が、もう一方の表面の上にある分子にくっつくことで生じる。
滑り摩擦力:運動している物体の表面に働く摩擦力。動摩擦力ともいう。箱を押して動かしているときに、その運動に抵抗している摩擦力は、滑り摩擦力である。静止摩擦力の場合と違って表面の分子どうしがつねにくっついているわけではないので、滑り摩擦力は静止摩擦力よりも弱い。
転がり摩擦力:一方が車輪やボールなど自由に転がる物体の場合に、表面どうしの間に働く摩擦力。スケートボードの車輪と路面との間に働く摩擦力は、転がり摩擦力である。転がり摩擦力は滑り摩擦力よりも弱いので、車輪が付いている物体のほうがずっと簡単に動かせる。
(本稿は、『アメリカの中学生が学んでいる14歳からの科学』から一部を編集・抜粋したものです)