大型連休が終わり、通常の生活を送るなかで、4月には感じなかったような疲労感を覚えている人は少なくないだろう。その原因は、連休中の睡眠リズムの乱れかもしれない。睡眠が不規則になると、「なかなか寝つけない」「1日中眠気を感じる」といった睡眠障害の症状が出やすくなり、心身の健康も崩れがちになってしまう。
そこで、睡眠の質の改善に役立つのが、25年以上睡眠専門医として活躍している坪田聡氏の著書『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』だ。本書は、短時間の睡眠でも朝スッキリと起きられ、日中もハツラツと活動できる「5時間快眠法」のメソッドを3つのステップで解説している。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、睡眠効率を高める「即寝」の技術を2つ紹介する。(構成/根本隼)

深刻な悩みやストレスを一晩で解消する「驚くほどシンプルなワザ」Photo:Adobe Stock

睡眠の効率を上げるには?

◎ふとんに入ってから考え事をしてしまって、なかなか寝つけない

 こんな悩みを抱えている人は多いのではないだろうか。このような、眠っているわけでも活動しているわけでもない時間は、はっきり言って無駄である。

 この時間を短縮すれば、睡眠効率は格段に上がる。8時間ふとんにいて実際の睡眠時間が6時間よりも、6時間ふとんにいて実際の睡眠時間も同じほうが、効率がよいのは当然だ。

 そこで、ふとんに入ってから5分以内に入眠する「即寝」の技術をご紹介しよう。

科学的根拠のある立派な「問題解決手段」とは?

 夜に考えすぎてしまう人に、伝えたい技術、それは「寝逃げ」だ。仕事が途中で行き詰まってしまったときや、明日までに解決しなければいけない問題がまだ解決していないとき、ふとんの中でも、その問題に考えを巡らせてしまうことがある。

 しかし、ふとんの中で問題と向き合うより、「もう寝ちゃおう」と現実から逃げたほうが、解決策が思い浮かぶことをご存じだろうか。

 この「寝逃げ」ともいえる行為は、決して「現実逃避」ではなく、科学的根拠のある立派な「問題解決手段」のひとつである。

 眠るだけで問題が解決する。こんな夢のような機能が、睡眠にはあるのだ。

脳の「最適化」機能があなたの悩みを整理する

 あなたも実際に、「朝起きたら、解決策が急に思い浮かんだ」という経験があるはずだ。実はこの現象は偶然ではない。

 人の脳は、レム睡眠中、起きていた時間にストックした情報の中から、自分に必要なものだけを抜き出して再処理している。パソコンの「最適化」のようなものだ。

 とくに大きな悩みがあればあるほど、この「最適化」機能は強くなる。古い記憶が整理され、新しい記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶのだ。これが「寝逃げ」のメカニズムである。

 寝逃げをして新しいアイデアを生み出す手法は「追想法」または「レミニセンス」と呼ばれている。発明家のエジソンや、1949年にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、この手法を利用して難題を解いたといわれている。

 ノーベル賞級の潜在能力を引き出すのが、この「寝逃げ」なのだ。

「寝逃げ」を上手に利用する2つのポイント

 寝逃げをうまく活用するためのポイントは2つ。ひとつは「眠りに執着しない」こと。「寝逃げをするために、早く眠らなくては」と焦って眠れなくなってしまっては本末転倒だ。

 もうひとつは寝る前に、「解決したいことをきっちり頭の中で整理する」こと。情報を手帳やノートに書き出してしまうのもいい。

 起きているうちに情報を明確にすることによって、眠っているときの脳の最適化機能はより高まるのだ。

スムーズに寝つくための効果的な方法とは?

 スムーズに入眠するためのコツをもう1つ。夜、寝る前に必ずやる、習慣となっている行動を「スリープ・セレモニー」という。

 セレモニーという字面だけ見るとなんだか大げさだが、「歯を磨く」「トイレに行く」「パジャマに着替える」といった行動もスリープ・セレモニーのうちに入る。要は、寝る前に必ずやる習慣はなんでもスリープ・セレモニーなのだ。

 スリープ・セレモニーは、スムーズに寝つくための効果的な方法となる。大切なのは、毎日、同じ行動を習慣づけている点。決まったスリープ・セレモニーを行うことで、脳は「ああ、この行動に入ったということは、そろそろ睡眠に入るんだな」と意識づけられ、自然に眠気を促すのだ。

「何も考えずにできる作業」が重要

 すでに多くの人がやっているように、「歯を磨いてパジャマに着替える」というのは最も一般的なスリープ・セレモニーだ。

 「簡単な片づけをする」「ストレッチをする」「音楽を聴く」など、活動的な時間と「睡眠」という休息時間の間に、「何も考えずにできる作業」を挟むのはとても重要だ。

 軽い気持ちでも続くような、自然にできるスリープ・セレモニーをつくることができれば、少々、環境が変わってもスムーズに入眠することができるだろう。

(本稿は、『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』より一部を抜粋・編集したものです)