仕事、プライベートにかかわらず、私たちは毎日、さまざまな問題や悩みを抱える。生きていくうえで付き物の「悩み」だが、寝て起きると「解決策が思い浮かんだ」「気持ちがスッキリした」という経験をしたことがある人は多いのではないか。
実は人間は、寝ている間に問題を解決してしまう驚くべき能力を持っている。今回は、この潜在能力のメカニズムと、最大限活用するためのポイントについて、最新刊『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』が話題沸騰の坪田氏に教えてもらった。
成功者も実践している「寝逃げ」のメカニズム
日本睡眠学会所属医師、医学博士。雨晴クリニック(富山県)副院長。睡眠専門医として、20年以上現場に立ち続ける。日本睡眠学会の他、日本スポーツ精神医学会、日本医師会、日本コーチ協会にも所属。ヘルスケア・コーチング研究会代表世話人も務める。1963年生まれ。石川県在住。日本を睡眠先進国にし、睡眠の質を向上させるための指導・普及に努める。2006年に生涯学習開発財団認定コーチの資格を取得し、「睡眠コーチング」を創始。2007年から生活総合情報サイト「All About」の睡眠ガイドとして、インターネット上で睡眠に関する情報を発信中。『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』(すばる舎)、『快眠★目覚めスッキリの習慣』(KADOKAWA)、『能力が5倍アップする 睡眠法』(宝島社)、『専門医が教える毎日ぐっすり眠れる5つの習慣』(三笠書房)など著書多数。
仕事が途中で行き詰まってしまったとき、明日までに解決しなければいけない問題がまだ解決していないとき……ふとんの中で、その問題に考えを巡らせてしまうことがあるだろう。
しかし、ふとんの中で問題と向き合うより、「もう寝ちゃおう」と現実から逃げたほうが、解決策が思い浮かぶことをご存じだろうか。
この「寝逃げ」ともいえる行為は、決して「現実逃避」ではなく、科学的根拠のある立派な「問題解決手段」のひとつである。眠るだけで問題が解決する。こんな夢のような機能が睡眠にはあるのだ。
あなたも実際に、「朝起きたら、解決策が急に思い浮かんだ」という経験があるはずだ。実はこの現象は偶然ではない。
人の脳は、記憶の固定化と筋肉の疲労回復を主な目的とする「レム睡眠(体の睡眠)」中に、起きていた時間にストックした情報の中から、自分に必要なものだけを抜き出して再処理している。パソコンの「最適化」のようなものだ。
とくに大きな悩みがあればあるほど、この「最適化」機能は強くなる。古い記憶が整理され、新しい記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶのだ。これが「寝逃げ」のメカニズムである。
寝逃げをして新しいアイデアを生み出す手法は「追想法」または「レミニセンス」と呼ばれている。発明家のエジソンや、1949年にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、この手法を利用して難題を解いたといわれている。ノーベル賞級の潜在能力を引き出すのが、この「寝逃げ」なのだ。