男子サッカー国際試合で「日本人女性審判トリオ」の快挙、主審がたどった軌跡とは審判を務める山下良美さん 写真提供:日本サッカー協会

日本サッカー界で前例のない快挙が達成された。アジア各国の強豪クラブが頂点を競うAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で、山下良美主審、坊薗真琴、手代木直美両副審で構成される女性審判員チームが初めて試合を担当した。特に36歳の山下さんはACLだけでなく、30年目を迎えたJリーグの公式戦でも初めて主審を務めた実績を持っている。男子のトップレベルの試合を裁く女性主審のパイオニアを歩む、山下さんのキャリアと素顔を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

サッカー界の歴史に新たな1ページ
日本人の女性審判員トリオが試合を担当

 アジアの頂点を目指し、日本から川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、浦和レッズ、ヴィッセル神戸が参加した今シーズンのACLで、サッカー界の歴史に新たな1ページが刻まれた。

 新型コロナウイルス禍が考慮され、ホーム&アウェイ方式ではなく、中東と東南アジアの4カ国で集中開催されているグループステージ。試合会場の1つであるタイ中部、首都バンコクに近いパトゥムターニースタジアムで4月21日、日本人の女性審判員トリオが試合を担当した。

 山下主審、坊薗、手代木両副審が割り当てられたのは、メルボルン・シティ(オーストラリア)と全南ドラゴンズ(韓国)が対戦したグループG第3節。前身となる大会を含めて半世紀以上の歴史を持つACLで、山下さんは主審を務めた初めての女性になった。

 36歳の山下さんは昨年5月16日、ニッパツ三ツ沢球技場で行われたJ3リーグのY.S.C.C.横浜対テゲバジャーロ宮崎でも主審を務めている。このときもJリーグの公式戦で史上初となる快挙だった。歴史を塗り替え続けるパイオニアは、どのようなキャリアを歩んできたのか。

選手だった山下さんが審判に
きっかけは先輩・坊薗さんの誘い

 昨シーズンにJリーグデビューを果たした直後に、山下さんを取材する機会があった。サッカー人生において、審判とはどのような存在だったのか。返ってきたのは意外な言葉だった。

「選手としてプレーしているときは、審判という存在は私の目には入っていなかったんですね。一緒に試合をしているはずなのに、言ってみれば全く興味がない、全く関心がない世界でした」

 東京都中野区で生まれ育った山下さんは、兄の影響を受けて幼稚園のときに始めたサッカーに夢中になった。社会人チームでボランチとして活躍しながら、都立西高から進んだ東京学芸大在学中に転機が訪れた。大学の先輩で先のACLで副審を務めた、坊薗さんから審判を頼まれたのだ。