ヨーロッパ人を感動させた「天正遣欧少年使節」

 所作やふるまいでも、日本人は美しさをつねに求めてきました。その最たるものは武士の世界でしょう。

 元来、和服は美しい身体の動きを要求される衣服ですが、武士は他人からあなどられないように肉体を鍛え、規律の正しさを己に課し、恐怖などの感情を表に出さぬように努力しました。それが“醜い”と考えられたからです。

 一六世紀に九州のキリシタン大名からヨーロッパに派遣された「天正遣欧少年使節(てんしょうけんおうしょうねんしせつ)」という若い武士たちがいますが、イタリアやスペインなど、彼らは行く先々で大ブームを巻き起こします。

 どうしてかといえば、「美しかった」からです。

 武士の美意識の中で鍛えられた彼らの所作やふるまいは、ヨーロッパ人を感動させるくらいに新鮮だった。それくらいかつての日本人は、世界でも抜きん出て「美しくあること」を求めていました。