工芸は、すべての創造的活動の原点

　私は、工芸は創造的活動の原点として、すべての分野の根幹にあるものと位置づけて考えています。

　そして、工芸の発展形として、

　・「無用の美」として開花したのが「アート」（美術工芸）
　・社会や生活と密接に関わる「実用の美」として進化したのが「デザイン」（生活工芸）
　・身体の拡張が未来の最先端の技術へと具現化しているのが「テクノロジー」（先端工芸）

　工芸の中でも特に

　・過去からの伝統的な美意識、技術をもとに受け継がれてきたのが「クラフト」（伝統工芸）

　です。

「アート」「デザイン」「テクノロジー」「クラフト」に関わるすべての分野の営みは、以下のマップの中に位置づけられます。

「アート」「デザイン」「クラフト」のちがいを言えますか？

　こうすることで、別々のものとして捉えられがちなそれぞれの領域が、密接に関係していることがおわかりいただけると思います。

　私の生業である「西陣織」は、工芸の中でも「クラフト（伝統工芸）」に属します。

　「伝統」でありながらも、細尾と同様に積極的に新しい取り組みを行なっている仲間がいます。それが図の中ほどにある「GO ON」というプロジェクトです。詳しくは、次回に説明いたします。

細尾真孝（Masataka Hosoo）
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞（イタリア）、iF Design Award 2021（ドイツ）、Red Dot Design Award 2021（ドイツ）受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。