子どもから「職人になりたい」と言われる世の中にしたい

　最初に出会ったのは開化堂の八木氏、公長斎小菅の小菅氏、金網つじの辻氏でした。

　出会って話しているうちに、それぞれの伝統工芸の分野で同じ課題に直面し、それを打開しようとするマインドも共通するものを感じ、すぐに意気投合しました。

　それから、少し遅れて中川木工芸の中川氏が加入し、その翌年には朝日焼の松林氏が加わり、現在の六名のメンバーとなりました。

　全員に共通する想いは、こうでした。

　伝統工芸は斜陽産業と言われているが、見方を変えれば、「クリエイティブ産業」へと生まれ変わらせることができるかもしれない。小さい子どもに、「将来何になりたい？」と聞いたときに、「職人になりたい」という答えが返ってくるようにしたい。

　当時は、現実とは程遠いように思える、そんな目標を持っていました。

　固定観念を打ち破ることがGO ONのポリシーでしたから、「前例のあることはやらない」が活動のルールです。GO ONの活動は、そういう場所から生まれたのです。

細尾真孝（Masataka Hosoo）
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞（イタリア）、iF Design Award 2021（ドイツ）、Red Dot Design Award 2021（ドイツ）受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。