NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

「前例のあることはやらない」がルールPhoto: Adobe Stock

家業を継ぐな

「斜陽産業だから、継ぐのはやめたほうがいい」

 それはGO ONのメンバーが、実際に自分の親たちから聞かされてきた言葉です。

 茶筒の開化堂の八木氏は、お父さんから「跡を継げとはよう言わん」と言われ、英語が堪能だったので、外国人向けに商品を売る会社に入って、販売をしていました。

 朝日焼の松林豊斎氏や、公長斎小菅の小菅達之氏も、「家業を継ぐな」と言われて、一度は会社勤めをしてから、家業に戻ってきています。

 たしかに私たちがGO ONを始めた頃、「伝統工芸」は、ビジネスとしては非常に厳しい状況に置かれていました。

 西陣織市場が三〇年で一〇分の一になったことは「はじめに」でも述べましたが、中川氏が営んでいるような桶屋も、五〇年前は京都に二五〇軒あったのが、GO ONの活動開始時には三軒になっていました。

 茶筒に至っては、手作りで茶筒を作っている会社は開化堂一社しか残っていませんでした。