政府は金融市場との闘いに
敗れるだろう

佐藤 政府が何かしらの解決策を打つのではないですか?

 後手後手になるでしょう。金利が1%上がった段階では、「金利は景気が上向くのを先取りして上がっているのだ」と考えます。ここまでは正しい解釈ですが、2%にまで上がっても、まだその解釈を捨てません。3%になると、「解釈が間違っていたかもしれない」と考え始めますが、良いアイデアが出るわけもなく、「様子を見よう」となります。4%に上がって初めて「大変なことになった」と気づくのですが、解決策があるわけでもなく、手をこまねいているだけでしょう。

 事態はあれよあれよという間に悪化していくものです。

佐藤 政府の役人でもない林さんが、どうしてそこまでいい切れるのですか?

 役人かどうかは無関係です。市場参加者には役人以上に見えることが多いのです。ぼくも市場参加者のひとりですから、痛いほどによくわかります。思惑と違った方向(損が膨らむ方向)に相場が動くと、「平常心はどこへやら」という心理状態になってしまうものです。

 しかも、相場のプロたちに比べて、役人たちには過去にそうした経験がない分、非常事態への対応はもっと稚拙なものになるでしょう。おろおろしているだけかもしれません。

佐藤 最終的には何が起きるのでしょうか?

 「もう国債の利子を払うことは無理だ」とあきらめる日がくるでしょう。

 日本を例に取るなら、1200兆円の国の借金(国債と借入金、政府短期証券の残高)、2021年度予算の国債比率41%という状態は、一般企業ならすでに破産状態です。にもかかわらず、破産宣告しないでいられるのは、今の金利負担が低いからです。

 過去40年間、金利は低下続きでした。いい思いをしてきた為政者たちは、これからもその思いを享受できると高をくくっています。ここが大きな罠のです。金利が直に上がり、破たんします。

佐藤 世の中では突然の倒産宣告と慌てるでしょうが、理屈で考えると、今から見通せることなのですね。

 経済はシンプルな理屈で動いています。「大きすぎる借金は返せない。返せないなら倒産するしかない」はそのひとつです。