株価は好調でも楽観は禁物!「実体経済のリスク」を解説写真はイメージです Photo:PIXTA

今のところ、世界的に株価が好調のようだ。しかし、ファンダメンタルズはリスク満載であり、楽観は禁物である。どういうことなのか、詳しく解説しよう。(経済評論家 塚崎公義)

世界の株式相場は
回復基調に

 ロシアのウクライナ侵攻や、原油価格の高騰などを受けて年初から大幅に下げていた世界の株価が、戻りつつある。原油価格も、一時の高騰からは少し落ち着いてきたようだ。

 市場は、ロシアがウクライナと停戦すると読んでいるのだろうか。そうだとすれば、世界戦争の危機が去ったというだけでも株価が戻る要因になるだろう。とはいえ、昨年末の株価をわずかに下回る水準まで戻るのは、ファンダメンタルズ(景気やインフレ率など、株価に影響を与える経済の基礎的条件)からは不思議である。

 株価は美人投票の世界であるから、説明困難な動きをすることも多く、「戻り過ぎだから再び下がるだろう」などと言えないことは当然だ。本稿では、ファンダメンタルズとしての世界経済のリスクに絞って考えることとする。

ウクライナ侵攻でさらに高まる
インフレリスク

 欧米では、元々ロシアの侵攻前からインフレ率が高まりつつあった。足元の資源価格の高騰が、製品価格を押し上げてインフレ率に反映されるのはタイムラグを伴うので、今後さらなるインフレが懸念される。

 特に、ロシアは世界最大級のエネルギー産出国であるため、ロシアからのエネルギーの輸入が制裁の対象となったり貿易が滞ったりすれば、世界のインフレを一気に加速させかねない。

 穀倉地帯での紛争が長引けば、世界の穀物生産に影響し、世界的な食料価格の高騰を招く可能性が高い。既に食料品価格は上昇しているが、次の収穫期に一層値上がりする可能性を十分考慮する必要がある。

 インフレは金融の引き締めをもたらすため、株価には大きなマイナス要因となると考えられる。ただし、ある程度のインフレは既に株価に織り込まれているだろうから、「インフレになるから株価は下がる」などということはできない。

世界経済が分断されれば
グローバル化のメリットが縮小

 戦闘自体は遠からず終結するかもしれない。しかしそうだとしても、日米欧とロシアとの悪化した関係は簡単には戻らないだろう。それによって、経済のグローバル化が後退すると、世界経済に大きなマイナスとなりかねない。