習近平政権の行方を左右する二つの最重要課題
「ウクライナ」と「ゼロコロナ」
「新型コロナウイルスの感染拡大とウクライナ危機が引き起こしているリスクと課題が増えており、わが国の経済発展環境にとっての複雑性、困難性、不確定性は上昇している。成長、雇用、物価をめぐる安定は新たな課題に直面している」
2022年4月29日、中国共産党の最高意思決定機関の一つである中央政治局が会議を招集し、習近平総書記(以下敬称略)が司会を務める形で昨今の経済情勢や対策を審議した。上記はその際披露された、党指導部としての現状認識である。
この日の会議のテーマは経済であったため、主に、新型コロナの感染拡大に伴うロックダウン、もっと言えば物議を醸してきた「ゼロコロナ」策の経済情勢・活動に対する影響をいかに最小限に食い止めるかに主眼が置かれていた。
一方、会議の冒頭で「今年に入って以降、100年の変局と世紀の感染症が相互に重なり合い、絡み合った複雑な局面」と現状を修飾している。党指導部として、ロシアの軍事侵攻開始から約2カ月半が経過したウクライナ危機と、新型コロナの感染拡大、およびその封じ込めのための中国式ロックダウン策が経済に及ぼす状況という二つの局面こそが、政権運営にとって最も差し迫った課題であると認識している状況を筆者は見いだしている。
ウクライナとゼロコロナ――。
第20回党大会を約半年後に控える中、習近平はこの2大不安要素こそが政権の権力基盤を脅かし得ると認識しているに違いない。
そして、ウクライナとゼロコロナはそれだけにとどまらない。供給網、個人消費、食料・エネルギー価格を含めた経済動向は言うまでもなく、米中関係、台湾問題など複雑な地政学情勢にも波及することが必至である。そしてこれらは疑いなく、「習近平第3次政権」の誕生過程と権力基盤を左右し得るのだ。