原始人的には、エネルギーのレベルが下がった状態は、襲撃されたら戦えない、逃げ遅れるかもしれないことを意味します。そのため、他者との交流を考えただけで“殺されるかもしれない”というレベルの被害妄想的な反応になってしまうのです。現実に自分に痛みや苦しみ、これ以上の労働を強いる兆候がある場合には、怒りの発動はさらに早くなります。

 現代に生きる私たちにも、その警戒心は働きます。疲れが溜まっているときは、他人のちょっとした言動が気になります。例えば、同じチームに、何かと人の足を引っ張り、ポカミスも多いメンバーがいるとしましょう。疲れが溜まってくると、彼が仲間と談笑しているのを見かけただけで、イライラしてしまうようになります。

「仕事は適当なのに、遊びのことだけは熱心だ」などと考えてしまいます。のんきなそのメンバーがするかもしれないミスを、自分がフォローしなければならないし、自分の評価にも悪影響が及ぶと感じるからです。

イライラの原因は
「相手」ではなく「自分」にある

 この場合、「このメンバーこそが私のイライラの原因だ」と考えてしまう人も多いと思います。「ミスをしてもヘラヘラした態度だから、私はムカついてしまうんだ」と考え、上司に相談したり、彼を呼び出して直接指導したりするなど、なんとか対処しようとするかもしれません。

 しかし、実際の原因は自分自身の「疲労」であることのほうが多いのです。「イライラ」は、疲れのバロメーターと考えたほうがいいのです。疲れて弱っている自分を守るために、イライラという怒りを発動させて、これ以上、自分に余計な負担がかからないように警戒している状態です。ヤマアラシが体の毛を逆立てて、周りの人に対して威嚇しているようなイメージでしょうか。

 イライラを感じたら原因をあれこれ探すよりも、とりあえず、しっかり休養することで解決することはよくあることです。

 イライラ事象があった日は、「疲れている」と自分に言い聞かせてください。嫌なことを忘れようと、楽しいストレス解消法をやる手もあるのですが、もしあなたに疲れが溜まっている場合は、そのストレス解消法をやること自体で、疲労を深めることになってしまう場合があります。

 気分は変えられても、疲労が深まっていますから、夜寝るときには、また今日の怒りがふつふつと思い出されてしまいます。

 では、どうすればいいのか。