河野太郎氏の疑惑と橋下徹氏の疑惑に共通点

 さて、このような橋下氏の「上海電力疑惑」に対する私見を述べさせたいただいたところで、最後に、河野太郎氏の「日本端子疑惑」との共通点に触れておきたい。

 それは「中国」と「太陽光パネル」という二つのキーワードが持つネガティブなイメージが、一人歩きしてしまっているという点だ。

 ご存じない方のために説明すると、河野一族が経営する日本端子がSNSなどで「中国共産党とズブズブ」とバッシングを受けた理由は主に二つある。

 一つ目は、「資本比率」。日本端子は中国にいくつか中国企業との合弁会社があるのだが、その自己資本比率が非常に高い。これは中国の外国企業への対応にとしてはあり得ないほどの「異例の厚遇」を受けているのだ、と一部の人たちが指摘をしたのだ。

 二つ目は、日本端子は中国で太陽光パネルの部品を生産しており、今や世界一になった中国の太陽光パネルビジネスの下請けをしている、とやはり一部の人たちが言い出したことだ。河野太郎氏の父、河野洋平氏は自民党の中で、親中で知られていたが、それはこの太陽光発電利権が絡んでいるなんてことを言うジャーナリストもいた。

 ただ、これらはすべてデマだった。「異例の厚遇」とやらの資本比率も、中国企業との合弁会社なら石を投げれば当たるほどよくあるものだ。今どきアメリカの投資会社も中国では自己資本100%で会社がつくれる。

 また、太陽光パネルも製造していない。日本端子は1960年に設立してから、製品の8割は自動車用のコネクタや圧着端子で、顧客も日本の自動車メーカーが多い。「中国の手先」などの誹謗中傷が多く寄せられたことを受けて、自社HPで「お知らせ」でも、これまで中国市場で太陽光発電の部品など販売したこともないと説明している。

 この「日本端子疑惑」は自民党総裁前、SNSでは大騒ぎになった。一部の政治家や彼らと近しい著名ジャーナリスト、政治評論家が取り上げて、「疑惑を徹底追及します」「日本の安全保障上大きな問題だ」などと叫んでいたが、河野氏が今何事もなく政治活動を続けていることからもわかるように、総裁選が終わるといつの間にやらこの「疑惑」は消えていく。「こんな親中政治家が自民党にいるのは大問題だ!」と怒っていたジャーナリストなどの皆さんも今では「そんなことあったっけ?」と何事もなかったような顔をしている。

 今回の橋下氏の「上海電力疑惑」がこれとまったく同じだと言いたいわけではない。
 
 ただ、どちらも「中国」と「太陽光パネル」という、人々のイマジネーションを刺激して巨大な陰謀を想起させるようなキーワードによって、やや話が一人歩きしているきらいがある。その点が酷似していると指摘したいだけだ。