ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。

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イエメンってどんな国?

 イエメンは、アラビア半島南西部に位置する国で、西端は紅海の出入口に面し、紅海やアデン湾を挟んでアフリカ北東部の国々と向かい合います。

 紅海沿岸には狭い平野、その背後には高原が広がり、国土のほとんどは砂漠ですが、アラビア半島の中では降雨の多い地域です。

 首都サヌアは内陸の高原にあり、沿岸部には東西交易の中継地として栄えた港湾都市アデンや、対岸のエチオピア産コーヒーの積出港として栄え、コーヒー豆のブランド名となっている都市モカがあります。古代には「幸福のアラビア」と呼ばれるほど交易で繁栄しました。

 20世紀に入り、現在の国土のうち紅海に面する範囲に、王国として北イエメンが成立し、後に共和国となりました。一方、19世紀からイギリス領となっていたアデンは、1967年に社会主義政権を目指す南イエメンとして独立しました。

 1990年に、南北が統合してイエメンとなりましたが、2011年に国軍と反大統領派との衝突が勃発し、イスラームシーア派勢力、旧南イエメン勢力、それにイスラーム過激派組織アルカイダが絡んで内戦が続いた後、サウジアラビアなどの周辺諸国の軍事介入や国連の仲介によって停戦し、新体制がつくられました。

 2015年以降、スンニ派の暫定政権を支援するサウジアラビアと、シーア派武装組織を支援するイランによる内戦が続いています。

「イエメンってどんな国?」2分で学ぶ国際社会

イエメン共和国

面積:52.8万㎢ 首都:サヌア
人口:3039.9万 通貨:イエメン=リアル
言語:アラビア語(公用語)
宗教:イスラーム(国教)99.1%(スンニ派65%、シーア派35%)
隣接:サウジアラビア、オマーン

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)