石井副社長は、トヨタ時代にインド法人社長やコーポレート戦略部長などを歴任し、日野自動車出向を経て鈴木修前スズキ会長に請われて20年に同社入りした人物だ。“外部参入組”ながら、現在の俊宏体制を支える重臣だ。

“ポスト修”の体制固めが命題となってきたスズキだが、俊宏社長が2015年に就任して以来この6月で7年目を迎える。俊宏体制の顔ぶれがようやく固まり、本格稼働し始めた。

 技術・開発部門統括の山下幸宏取締役専務役員も、俊宏体制における重要なピースだ。山下専務も石井副社長同様、“外部参入組”であり、18年にデンソーからスズキ入りしている。デンソーは俊宏社長の“古巣”であり、スズキがインドでの電動化戦略で連携を深めている相手でもある。

 山下氏は、プロパーで技術開発出身の本田治代表取締役技監の“後継者”のポジションにあり、EVシフトなど課題が山積する俊宏体制での重責を担う。現在、スズキはトヨタと相互出資しEVなどにおいて連携を行うが、人材面でもトヨタとの連携が重要なカギとなっているのだ。

 ちなみに、4月から石井副社長と共に、インド駐在でインド自動車工業会会長を務める鮎川堅一マルチ・スズキ社長をマルチ・スズキ副会長に昇格させるとともに、インド事業統括として本社副社長に昇格させる人事も行った。

 副社長として石井副社長と鮎川副社長が、技術面では本田技監がサポートする形で、山下専務が俊宏社長を支えるという体制が明確になった。

インド投資で市場固め&EVシフト
トヨタグループとの連携がカギに

 さて、インドの新工場に話を戻すが、スズキの狙いを簡単に言えば、インド市場の成長に合わせて生産能力を増強することと、インド市場をスズキのEVシフトのための“橋頭堡(きょうとうほ)”とすることにある。