朴振(パク・チン)外相は、慰安婦合意は公式合意と認めながら「最も重要なのなのは被害者の名誉と尊厳回復のため、韓日が共に努力すること」と述べている。そこで「謝罪」という言葉を使っていないのは、日本が何回も謝罪させるのかと反発するだろと予測し選択肢を広げておこうという趣旨なのかもしれない。

 その朴振外相は外相会談のため、6月中旬に来日すると伝えられている。会談は 岸田首相と尹錫悦大統領の首脳会談実現に向けた地ならしが目的である。最初の首脳会談は早ければ、6月下旬にスペインのマドリードで開かれるNATO首脳会議に日韓首脳が参加を検討しているので、そこで行われる可能性がある。

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 ただ、日韓関係が本格的に動きだすのは、6月1日の韓国の統一地方選挙、および、7月10日(見通し)の日本の参議院議員選挙が終わるまで待たなければならないかもしれない。年内に懸案を一括解決するため、尹錫悦大統領が今夏以降に訪日する可能性もあるという。

 いずれにせよ、慰安婦問題の解決に向けて最も重要なことは、これまでの日韓合意にことごとく反対し、妨害してきた正義連を排除することである。15年の慰安婦合意によってできた財団には「慰安婦のための名誉と尊厳を回復、心の癒やしのための事業を行う」と記しており、慰安婦の名誉と尊厳を守る事業は既に行われている。これをいかに強化していくかを考えればいいのではないか。

 しかし、この方向で進もうとすれば、正義連は必ず反対してくる。正義連は尹美香氏の不正で、既に昔日の影響力はない。今回の外交文書の公開を通じて、これまで日韓両国政府の努力をいかに妨害してきたかを明らかにすることで、正義連の妨害をはねのけ、今度こそ、「最終的不可逆的な解決」に到達してほしいものである。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)