こうした内容の法案に、寄付金や補助金流用の罪で起訴された尹美香氏も議員として共同提案者になっていた。これは尹美香氏も保護対象となることを意味し、これを知った女性市民団体も法案撤回を求める共同声明を出すに至った。このようにあまりにも自分勝手な法案は民主党の支持が得られず撤回された。

 ちなみに、尹美香氏は、寄付金流用で補助金管理法違反、詐欺、業務上横領など8つの罪で在宅起訴(20年9月)されており、21年8月11日ソウル西部地裁で裁判が行われている。

 そのほか市民から集めた募金を焼き肉店やマッサージ店の支払いに、217回計930万円を支出した疑惑、娘を米国に留学させた費用の出所に関する疑惑、慰安婦のための施設を高額で購入し、疑惑が伝えられるやそれをはるかに下回る価格で売却した疑惑など、不正行為の疑惑は後を絶たない。

 慰安婦問題が解決してしまうと、こうした利得行為を続けられないことを懸念したのだろうか。慰安婦問題解決の兆しが見えるたびに、尹美香氏は妨害行動を繰り返してきた。

尹錫悦政権は
日韓関係の改善に本腰

 尹錫悦大統領は政権発足前から日本に政策協議代表団を派遣し、日韓関係改善の意思を伝えてきた。尹錫悦大統領も歴史問題の解決が日韓関係改善のため不可欠であることを認めている。

 協議団に参加した李相徳前シンガポール大使は、2015年の日韓慰安婦合意当時の北東アジア局長であり、交渉の実務責任者であった。このため文在寅政権によってシンガポール大使を解任されたが、尹錫悦大統領が協議団に加えたものであり、尹錫悦大統領は文在寅氏とは異なる視点で歴史問題を含む日韓の問題の解決に本腰で取り組む姿勢を見せている。

 しかし、主要な懸案に対する両国間の認識の違いは依然として解消されていない。

 日本側の立場は、岸田首相も指摘したように、国と国の約束を守ることが国家間の基本であり、対立を解決するための案も韓国側が出すべきというものである。

 これに対し韓国側は鄭鎮碩(チョン・ジンソク)団長が述べたように「韓日双方が勇気と知恵と忍耐を集めてこそ解決ができるという点を(日本側に)明確に話した」という。