同文書によれば、15年3月、李相徳局長は尹美香氏に面会。協議動向を説明。2カ月後には「(日本の)責任認定問題」「被害者への補償問題」「謝罪表現の問題」「慰安婦少女像の撤去問題」などを説明、10月には合意の妥結可能性と進捗状況を説明していた。

 さらに合意発表の前日、合意に盛り込まれる主な内容である「日本の責任痛感」「安倍晋三首相の直接的な謝罪および反省の表現」「日本政府の予算10億円拠出」などを説明した。

 ここで明らかになった内容に関し、弁護士会のキム・テフン名誉会長は「合意の前日、尹美香氏に会って合意内容の詳細について話したと文書に記されている」「尹美香氏は慰安婦被害者と合意内容を十分共有することができたのに、(それをせず)不要な誤解を招いた」と尹美香氏を批判した。

 尹美香氏は「『外務省が尹美香と何回も会った』という一部の内容だけを選別して暴き、事実関係を歪曲して屈辱的合意をもみ消そうとする政治的攻勢はやめるべき」と主張した。

 いずれにせよ、文在寅政権の下では、こうした文書の公開をためらい、正確な事実関係を隠蔽(いんぺい)していた。

 そして正義連は「正しい慰安婦問題の歴史は自分たちが元慰安婦の証言をまとめた内容であり、それがすべての事実である」と言い張った。それは慰安婦の歴史は正義連が作るとするものであり、慰安婦問題について真摯(しんし)に学術的研究を行ってきた人の研究成果を否定し、その本の出版差し止めを求めるなどした。

 慰安婦問題の日韓交渉の前面には常に正義連が立ってきた。これまで、日本側が行った努力を韓国政府が評価しても、正義連はそれに反対し続け、韓国政府はその圧力に抗しきれず、日本に対して新たな要求を出し続けた。

 正義連にとって、慰安婦問題が解決することは自らの利益とはならず、それを妨害し続け政治的活動を強化することに意義を見出してきた。

 それゆえ正義連は15年の慰安婦合意についても、元慰安婦の3分2が納得した合意であっても受け入れることができず、まして事前に相談を受けていたことを認めたがらなかったのである。

正義連は慰安婦支援ではなく
自らの利益を追求する政治団体

 21年8月、当時の与党「共に民主党」議員らが、元慰安婦への名誉棄損を禁じる法案を国会に提出した。

 同法案は慰安婦問題について新聞や放送ネットなどで虚偽事実を流布したものに懲役や罰金刑を科す内容が柱となっている。しかし、それに加えて元慰安婦や遺族、慰安婦関連団体に対し、誹謗(ひぼう)目的で事実を指摘する行為まで禁止している。