ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。

「シリアってどんな国?」2分で学ぶ国際社会

シリアってどんな国?

 シリアは、中東に位置し、トルコイラクなど5ヵ国に囲まれ、西部は地中海に面する国です。地中海付近は温和な気候ですが、内陸部には砂漠が広がります。

 国土中央には、トルコからシリアを経て、イラクへと繫がる西アジア最長の大河、ユーフラテス川が流れています。

 かつてはオスマン帝国領に属し、後にフランスの委任統治を経て、1946年に独立しました。

 1971年、アサドがクーデターで政権を掌握して以来、アサド一族の独裁が続いています。

 イスラエルとの第三次中東戦争で南部のゴラン高原を占領されて以来、イスラエルとは対立関係にあります。またレバノンの内戦に介入して、シリア寄りの政権を擁立しています。

世界最大の難民問題「シリア危機」

 内政では、2011年の「アラブの春」に端を発する反政府デモ以降、国内の反体制派が弾圧を受けています。

 欧米、ロシア、周辺諸国の介入と国内のIS勢力の動きによる内戦の激化で「シリア危機」とも呼ばれる人道危機状況が続いています。

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 60万人に及ぶ死者と行方不明者、500万人を超える難民、600万人を超える国内避難民が発生しています。

 産業としては、地中海性気候を利用した農業や内陸部での牧畜が行われてきましたが、1989年から石油の輸出を始めています。ただ、内戦状態の長期化とそれに対する欧米の経済的制裁もあって、国民生活は苦しいままです。

シリア・アラブ共和国

面積:18.7万㎢ 首都:ダマスカス
人口:2038.4万 通貨:シリア=ポンド
言語:アラビア語(公用語)、クルド語
宗教:イスラーム(国教)87%(スンニ派74%、アラウィー派、イスマーイール派、シーア派13%)
隣接:トルコイラク、ヨルダン、イスラエル、レバノン

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)