ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1ヵ国ずつ世界の国を紹介する。

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トルコってどんな国?

 トルコは、ヨーロッパとアジアをつなぐ場所にあり、黒海と地中海を結ぶ2つの海峡(ボスポラス海峡とダーダネルス海峡)をまたいで、ヨーロッパ側とアジア側に国土を持ちます。

 東部はジョージアアルメニアイランなど、南部はシリアなどの国と国境を接します。西部はブルガリアやギリシャと国境を接します。

 イスタンブールは、ボスポラス海峡をまたぐトルコ最大の都市です。古代からさまざまな帝国が栄え、13世紀に建国されたオスマン帝国はヨーロッパ、アジア、アフリカにまたがる領域をもちイスラームの盟主として20世紀初頭まで存続しました。

 第一次世界大戦での敗戦による国土分割の危機の中、1923年に共和国が樹立されイスラーム世俗主義のもとで近代化が進められました。

クルド人問題がEU加盟交渉の足かせに

 トルコの外交の基本は欧米との関係重視で、現在EU加盟を目指しています。またロシアと欧米諸国との関係や不安定な中東情勢をふまえて、周辺各国との外交を展開しています。

 トルコ国内には少数民族がいますが、なかでもイラン、イラク、シリアとの国境地帯に居住するクルド人は総人口の約2割を占め、クルディスタンの独立を求める動きを展開しています。

 クルディスタンに対するトルコ政府の厳しい抑圧は、国際的に非難されており、とくにEU加盟交渉においてはマイナスとなっています。

中央アジアと欧州を結ぶ「巨大石油パイプライン」がトルコを横断

 2006年、カスピ海沿岸で産出した石油を輸送するため、アゼルバイジャンのバクーからジョージアのトビリシを経て、地中海東部に位置するトルコの港ジェイハンまでの約1800kmに及ぶ、BTCパイプラインが完成しました。

 これはソ連崩壊後、欧米の石油会社によって計画されたものです。最短距離となるアルメニア経由のルートをとらなかったのは、トルコ、アゼルバイジャンアルメニアとの関係が影響しており、ロシアを含めたこの地域の複雑な国際関係が背景となっていました。

 このパイプラインは、中央アジアと欧米を結ぶ資源輸送ルートとして政治的にも重要な役割を持っています。

 アジア側の国土のほとんどは丘陵や高原で、地殻運動が盛んな地帯に当たるため地震が頻発します。とくに1999年には北西部で大地震が続発し大きな被害を出したほか、2020年にもエーゲ海を震源とする地震で被害を受けています。

 世界遺産として有名なカッパドキアは、火山活動による独特の地形とそれを利用した居住様式が特徴的で、多くの観光客を集めています。

 伝統的に農業国であり、地中海性気候のもとでトマトやブドウ、オリーブなどの生産が盛んです。また亜炭や褐炭、クロム鉄鉱などの地下資源も豊富です。

 ドイツなどのヨーロッパ各国へ多数の出稼ぎ労働者を送り出しており、その仕送りが経済を支えています。

トルコ共和国

面積:78.4万㎢ 首都:アンカラ
人口:8248.2万 通貨:トルコ・リラ
言語:トルコ語(公用語)、クルド語、アラビア語
宗教:イスラーム99.8%(大半がスンニ派)

隣接:ブルガリア、ギリシャ、ジョージアアルメニアアゼルバイジャンイラン、イラク、シリア

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)