東京都心のオアシス、明治神宮外苑。その再開発計画が今、暗礁に乗り上げている。都民を長年癒やしてきた少なくない木々を犠牲に、スポーツ施設の刷新のみならず、超高層ビルの建設計画が進んでいることが浮上したからだ。都民不在でひそかに進められてきた神宮外苑再開発のウラ側に迫る、短期集中連載『都心開発、最後のフロンティア 明治神宮外苑再開発のウラ側』(全3回)の最終回では、宗教法人、明治神宮の思惑と共に、神社界を取り巻く政官財の人脈図を詳らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
神宮外苑再開発を巡る
明治神宮と三井不動産をつなぐ人物とは?
「相手が“神様”だから大変だな――」
本連載#1(『神宮外苑再開発が暗礁に乗り上げた裏事情、森元首相に長生きを誓わせた「極秘計画」の顛末』)で見たように、現在の明治神宮外苑(神宮外苑)再開発に連なる「原案」は2012年5月、東京都の佐藤広副知事と安井順一技監(肩書は当時)から、森喜朗元首相に示された。
このとき、安井氏は、計画を思惑通りに進めるための絶対条件として「明治神宮の協力が必要」と、神宮外苑における“大地主”の名を口にしている。冒頭の言葉は、森氏が安井氏にかけたねぎらいの言葉だ。
だが、森氏らの心配は杞憂だった。それどころか、「神様」にとっても「渡りに船」だったに違いない。
くしくも、森氏と都幹部の“密談”からわずか2カ月後の同年7月、歴代の都知事や各界えりすぐりの人物が任に就く明治神宮の「総代」(崇敬者の代表)に、新たな人物が加わった。11年6月から三井不動産会長を務め、同社の絶対的な存在として君臨し続ける岩沙弘道氏だ。
そして、岩沙氏の総代就任から約半年後の13年1月、三井不動産は、明治神宮や伊藤忠商事など地権者6者による神宮外苑再開発の検討会のメンバーとして、社名が初めて登場する。ただし、三井不動産の名前が表舞台に出てきたのは15年4月、東京都が地権者6者と締結した「神宮外苑地区まちづくりに係る基本覚書」においてだ。
要するに、明治神宮は原案と前後して、水面下で神宮外苑再開発の要となる三井不動産のトップを“身内”とする動きがあったわけだ。では、どのような経緯で明治神宮と三井不動産は関係を深めていったのか。
事情に詳しい神社関係者は、「ある時期を境に、明治神宮のみならず、伊勢神宮を含めた神社関係者が岩沙氏の元に足しげく通うようになった」と振り返る。
神社関係者たちの“岩沙詣で”の理由とは何か。次ページでは、その答えと共に、神宮外苑再開発を見る上でより理解が深まる、明治神宮(神社界)と、森・安倍晋三元首相など大物政治家から五輪幹部、省庁、巨大企業までをつなぐ、マル秘「組織・人脈図」を掲載する。