イチョウ並木の豊かな自然とともに、スポーツの聖地としても親しまれる東京の明治神宮外苑は、新国立競技場建設に伴って「再開発等促進区」となり複数の計画が着々と進行中だ。このほど、宗教法人明治神宮と三井不動産によるホテル建設計画が浮上したが、これは一連の大規模再開発の序章にすぎない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟、本誌委嘱記者・大根田康介)
風光明媚な明治神宮外苑にあって、周囲の森林と相まってひときわ目立つ聖徳記念絵画館。その西側に、四角四面の建物がぬっと顔を出すことになり、批判が渦巻いている。
下の写真と図をご覧いただきたい。11月に開かれた東京都新宿区の景観まちづくり審議会で示された資料によるもので、高さ50メートル、13階建ての「神宮外苑ホテル」が建つ。宗教法人明治神宮が三井不動産と手を組み、建設中の新国立競技場の北側に建てる予定だ。
竣工は東京五輪に合わせた2019年夏で、客室数は350~400室。地権者の明治神宮と三井不が定期借地契約を交わし、明治神宮は三井不が支払う借地料で、三井不はホテル運営で収益を得るというスキームだ。言うまでもなく、既存のフットサルコートやレストラン「水明亭」は取り壊されることになる。
神宮内苑と外苑は日本初の風致地区として、建物の高さ制限など厳しい規制が設けられているが、今回、都はホテル建設の提案を受け、地区計画を見直す方針だ。そのため都や新宿区などが12月2日、建設予定地近くの小学校で、地区計画変更の住民向け説明会を開いたが、彼らの説明に対し、住民からは疑問の声が相次いだ。
例えば、都が明治神宮と三井不から計画の提案を正式に受けたのは、今年の8月のこと。その前に、事業者の2者と都、新宿区は協議を重ねてきたはずだが、「この計画を都が把握したのはいつなんですか」という質問に対し、都の担当者は「協議の記録がなく、いつ把握したのか分からない」「協議ではなく、相談を受けただけ」と回答したため、住民から「そんなわけないだろう」と怒号が飛ぶ一幕もあった。こんな説明では、住民の納得は到底得られるはずもない。