筆者がオススメする
老後の住み替えパターンを紹介

 資産を現金に換える3つの方法を見てきたが、どの選択肢もお金の出し手にとって有利でないと成立しない仕組みになる。そこで私は別の提案をしよう。自宅で資産形成をしたものの、それは含み益でしかない。含み益は売却を伴わないとキャッシュには換わらない。だからこそ、売却を前提に考える必要がある。

 その際、売り手側は、必要ではなくなった面積を積極的に売ると考える。家族4人で70平方メートルに住んでいた場合、家族が2人になって50平方メートルにダウンサイジングすれば、約3割をキャッシュ化できる。現在は40平方メートル以上なら住宅ローン控除が使える。マイホーム扱いなので、40平方メートルにすれば、43%の益出しが可能になる。

 購入した5000万円が7割値上がりして8500万円になり、その間住宅ローンを1500万円を返済していたら、売却でいったんは5000万円のキャッシュが得られる。同じ立地でダウンサイジングして住み替えるなら同じ単価で買えるので、50平方メートルなら8500万円×50/70平方メートル=6071万円になる。この際も、住宅ローンは借りられる限り組んだほうがいい。なぜなら、リバースモーゲージの3%よりもはるかに金利は低く、返済額はセールス&リースバックよりも安いからだ。

 住み替えでキャッシュを失うのは損だ。なぜなら、「キャッシュ・イズ・キング」と言われるように、キャッシュは病気の治療や老人ホーム入居など何にでも使うことができる。こうして、売買差額2429万円(=8500万円-6071万円)とローンの元本返済1500万円で、3900万円ほどを手にできる。売買で仲介手数料や融資手数料がかかるが、「住まいサーフィン」で行っている高値売却の実績では、相場平均の7%高で売却できているので、諸費用をほぼ相殺できると想定している。

 こうしたダウンサイジング以外にも、私は自分自身の住み替えをいくつかのパターンで考えている。一つは、実家に住み替えることだ。親の家があるが、私の老後には相続している可能性があり、そうなると今の家を売却するだけで、次の家を買う必要がなくなる。

 次に、老後は資産価値の高いものに住む意味があまりないので、安い家に住むというのもある。例えば、マンションではなく戸建てに住むとか、立地は郊外でもいいとか、借地でもいいとか、そういうことだ。

 それ以外にも、私の場合は自分の会社を使って、役員社宅として会社が賃貸借契約をして会社にしかるべき家賃を私が払うという方法がある。公務員社宅が市場家賃に対して安過ぎるなどとしてメディアで取り上げられることがあるが、これはどんな会社でも利用できるお得な制度であり、合法である。一定の計算式で家賃を取れば給与の代替として課税されることがないが、その家賃水準は都心ほど安く、市場家賃の1~2割になる。市場家賃30万円のマンションでも3万~6万円の負担で済むのだ。毎月24万~27万円を12カ月なので、会社の資産を年間約300万円、10年間で3000万円を無税で引き出しているようなものだ。

 このように、それぞれの立場に応じて、老後の家については多様な考え方ができる。現実的な選択肢として、自分の場合には何があるかを考えてみてほしい。それを今決める必要はないが、資産が今後も膨らむ可能性が高いだけに、いざ決断の時を迎える前に算段や腹積もりがあるだけで、住み替えで慌てて失敗するリスクは軽減されるに違いない。