中国で16~24歳の失業率が上昇し続けている。2022年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。SNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
建国以来最悪の中国の失業問題
中国で失業者が急増している。その状況はかなり深刻で、中国の労働市場は1949年の建国以来、最悪期を迎える懸念が高い。特に、16~24歳の若年層の雇用環境の厳しさが増している。中国の新卒者の中には、わが国での就職を目指す若者も増えていると聞く。
失業者急増の最大の要因は、経済成長が限界を迎えていることだ。改革開放以来、天安門事件という大きな混乱を挟みつつ、共産党政権は党の指揮によって需要増加が期待される分野に生産要素を再配分し、実質GDP成長率が10%を超える高度経済成長期を実現した。しかし、2017年の党大会以降、成長率の低下は鮮明だ。米中対立やゼロコロナ政策の徹底、ウクライナ危機などが成長率低下に拍車をかけている。
当面の間、世界の供給制約は深刻化する。資源価格の高騰も長引くだろう。中国では石炭不足などによって電力供給も不安定だ。在来分野から先端分野、中小零細企業から大企業までコスト削減を優先せざるを得ず、追加的に雇用を削減する企業が増えるだろう。中国の失業問題の深刻化が懸念される。