ビットコインは「骨董品」になる?
仮想通貨の価値はさらに下落する恐れ

 今後、ビットコインなどの価値はさらに下落することも想定される。その一因として、主要先進国の中央銀行がCBDCの研究を加速させていることは大きい。5月に国際決済銀行(BIS)が公表した報告書によると、調査対象となった81中銀の9割がCBDCを検討している。

 中央銀行が発行するデジタル通貨は、強制通用力を持つ。ビットコインなどと異なり、CBDCの価値は一定だ。法定通貨のデジタル化によって、各国の中央銀行は経済運営の効率性向上を目指すことができる。

 紙幣や硬貨の使用コストは軽視できない。偽札の防止には高度な印刷技術が必要だし、紙幣の管理には大型の金庫を設置しなければならない。現金輸送のコストも発生する。CBDCの利用によってそうしたコストが軽減される。

 FRBは、クロスボーダーのCBDC取引のルールを整備し、リーダーとしての役割を果たすと表明した。各国の大手銀行なども対応を急ぐ。CBDCの流通に向けた取り組みが加速するに伴い、多くの企業が決済のために民間の仮想通貨ではなく、CBDCを使うようになるはずだ。となると、ビットコインなどの需要は減少するだろう。

 長期目線で考えた場合、ビットコインは少数の愛好家に取引される骨董品のような性格を強める可能性がある。一方、ステーブルコインに関しては、米証券取引委員会(SEC)が規制を強化しようとしている。SECはステーブルコインの交換所の投資家保護が不十分だと考えている。

 また、ステーブルコインを売る人が急増した場合、CPの大規模な売却が発生し、流動性が枯渇する恐れもある。それはシステミック・リスク(個別の金融機関の支払い不能や、特定の市場または決済システムの機能不全が、他の金融機関や市場、または金融システム全体に波及するリスク)の潜在的要因だ。

 規制強化に加えて当面、各国の中央銀行はインフレ退治のために急速に金融政策を引き締めなければならない。リスク回避に動く投資家は、さらに増えるだろう。仮想通貨バブルを支えた二大要因である、カネ余りと過度な先行きの楽観は解消に向かう。ビットコインやステーブルコインの価値には、さらなる下押し圧力がかかるだろう。