バブルから一転、21年11月末から下落
5月以降、民間の仮想通貨市場は総崩れに

 21年年初に2万9000ドル台だったビットコイン(BTC)価格は、11月に6万ドルを突破し、7万ドルになるとの予想が増えた。ビットコインの価格上昇は、まさにバブルと呼ぶにふさわしい。

 しかし、未来永劫(えいごう)、価格が上昇し続けることはない。21年11月末、相場は転換点を迎えた。FRBのパウエル議長が、「物価上昇は一時的」との認識に対して誤りを認めた。世界の「カネ余り環境」が修正されるとの懸念が急増し、ビットコインなどの価格が下落に転じた。21年11月末から22年6月末までの間、ビットコインの対ドルレートは約65%も下落した。

 加えて、5月以降、相対的に価値が安定していると考えられたステーブルコインの価値も下落した。民間の仮想通貨市場は総崩れだ。

 ステーブルコインが下落した背景には、世界的なインフレ懸念を背景にリスクオフに動く投資家が急増したことがある。結果として、法律によって価値の安定が規定されていない仮想通貨の保有に不安を抱く人が増えた。米ドルやコマーシャル・ペーパー(CP、短期の社債)などを保有することによって価値を一定に保とうとしてきた「テザー(Tether、シンボルはUSDT)」などの価格は下落した。

 裏付けとなる資産の有無などによってリスク水準は異なるが、民間仮想通貨に価値を一定に維持する仕組みはない。価格は需給、人気などに影響され、変動する。どうしても民間の仮想通貨は投機の対象になる。

 6月下旬、シンガポールを拠点に仮想通貨を取引するヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタルが清算に追い込まれた。同社は資金を借り入れて(レバレッジをかけて)ビットコインなどを買い、高値で売却し、利得を手にしていた。しかし、想定外の相場下落によって資産は急減。資金を返済できなくなった。

 この件で思い起こされるのが、2007年8月の「パリバショック」だ。仏大手金融機関BNPパリバ傘下の投資ファンドが、信用力の低い米住宅ローンを証券化した金融商品の価格下落に直面し、事業が行き詰まった。パリバショックは米住宅バブルの崩壊を象徴する出来事だった。