7月8日、安倍晋三元首相が銃撃され死去した。ショッキングなニュースは、日本とほぼ同時刻に隣国・中国でも報じられ、瞬く間に話題となった。中国人はこの事件に対して何を考え、どう反応していたのか。さまざまな意見をまとめた。(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国にとって“敏感”な時期に起こった
安倍元首相銃撃事件
7月8日の11時半過ぎ、筆者はジムでトレーニング中に、知人のマスコミ関係者から「安倍さんが銃で撃たれて心肺停止」という一報を受けた。驚く間もなく、今度は中国にいる友人たちからこのニュースのスクリーンショット写真付きで「これって本当!?」「なぜ銃?日本は銃を持ってはいけないんじゃないの?」といった質問が、ウィーチャット上で矢継ぎ早に送られてきた。
スマホで日本のニュースサイトを確認しながら友人たちに返信したが、日本の速報とほぼ同時刻で中国でも報道されており、そのスピードに驚いた。中国の官製メディアの代表である人民日報や環球時報をはじめ各種メディアのオンライン版が一斉に、「日本の安倍元首相が血を流し倒れた」「安倍元首相が銃撃され生死不明」などのタイトルで記事を掲載。わずか30分後の正午ごろには、中国語版ツイッター「微博(ウェイボー)」の注目ランキングのトップ10のうち1~5位をこの話題が占め、1位のトピックへのアクセス数は1700万件以上にも上った。
同時にSNSへの書き込みが殺到した。安倍元首相については、2年前の2020年8月に健康上の理由で首相辞任を表明したときにも、中国で大きな話題となっていた(2020年9月1日配信の記事『中国のSNSで「安倍首相の辞任」が驚くほど盛り上がり、好意的な理由』を参照)。
ただ、首相辞任を表明したニュースの際は総じて好意的な意見が多かったのだが、今回、特に事件が発生した当日においては、「哀れな気持ちが全くしない」「今日は良い日だ!」といったネガティブなコメントが目立った。中には、目を覆いたくなるぐらい冷酷なコメントもあった。そして、そうした書き込みにたくさんの「いいね」が付いていたのだ。
わずか2年間で、同じ安倍元首相に対して真逆ともいえる意見が多数表出したのは、一体なぜだろうか。中国のシンクタンクで日本専門の研究員として働く筆者の友人は、事件が起こった「時期」にも一因があるとみている。