自民大勝で信任を得た「新しい資本主義型アベノミクス」三本の矢の具体像Photo:PIXTA

アベノミクスは、岸田首相が提唱する新しい資本主義の下で改編される。積極財政が三本の矢に推進力を与えるだろう。新しい資本主義型アベノミクス(キシダノミクス)の具体像を提示する。(岡三証券チーフエコノミスト 会田卓司)

骨太の方針で示された予算編成の
二つの明確な方向性

 参議院選挙では自民党と公明党の連立与党が非改選議席と合わせて過半数の議席を維持し、現行の政権運営が信任された。

 自民党は改選議席で単独過半数を上回る大勝となり、自民党内での岸田首相の求心力は維持されることになる。岸田政権の新しい資本主義の方針も信任され、参議院選挙後の課題は、新しい資本主義をしっかり稼働し、国民にその成果を早急に実感させることだろう。

 2023年度の政府予算編成の骨太の方針では、二つの明確な方向性が示された。

 一つ目は、プライマリーバランス黒字化目標の年限が明示されず、検証中の扱いとなり、マクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならないとされ、事実上無効化されたことだ。

 二つ目は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組み、すなわちアベノミクスの形を堅持することだ。参議院選挙では、積極財政とアベノミクスの融合となった骨太の方針が、国民の信任を得たことになる。

 骨太の方針は自民党の財政政策検討本部の議論などでの安倍晋三元首相の指導力が結実したものであり、強い経済が強い国力の源であるという安倍元首相の遺志はより強固に継がれるだろう。

 暴力で既に決した政策の方向性が変化することを自民党は拒否し、骨太の方針の積極財政とアベノミクスの融合は新しい資本主義型アベノミクス(キシダノミクス)として推進されていくことになるだろう。欧米とは異なり、日本は政治安定・金融緩和・積極財政の三拍子がそろっている状況が続く。

 アベノミクスの三本の矢を、新しい資本主義の考え方で改編し、積極財政の力で三本の矢に推進力を与えることになる。その具体像を次ページからひもといていく。