全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。
評価にゼロはない。
「プラスか、マイナスか」だ
メンバー全員が成長を目指し、「働かないおじさん」を1人でも生み出さないためには、どうすればいいのでしょうか。
方法は1つです。
それは、「マイナス評価」を取り入れることです。
日本の多くの会社では、一度上がった給料が下がることはありません。
「定期昇給のみ」「賃金は年功序列」「成果を出さなくても給料が上がっていく」……。
私たちの考えでは、これが成長を止める元凶だと思っています。
多くの企業では、評価制度は「加算方式」です。
現状維持の人は「0点」、頑張った人にはその度合いに応じて「1~4点」をプラスする。そういう制度がほとんどでしょう。
ただ、現実には、評価には「良い」と「悪い」しかないと思うのです。
たとえば、おなかが空いたとしましょう。たまたま入った定食屋が「おいしければ、また行く」「そうでなければ、もう行かない」と、2つしか選択肢はありません。
つまり、評価に「ゼロ」はなく、「プラスか、マイナスか」に分けないといけないのです。
そして、マイナス評価だった場合は、給料にも反映されるべきです。
この制度を取り入れると、「現状維持はヤバい」ということが個人にも認識できます。
「このままだとうちの会社はマズいよね……」と思いながら、自分たちの給料がそのままだとしたら、きっと危機感は訪れません。
だって、自分の生活は現状維持ができているのですから。
ゼロ評価がないと人はどう考えるのか?
評価にはゼロがない。
これを徹底しないと、成長しない言い訳が成立します。
たとえば、次のように、年に4回の評価を部下に下すとします。
・1回目「結果が出たから『プラス3』です」
・2回目「未達だったので、『マイナス2』です」
・3回目「あと一息だったので『マイナス1』です」
・4回目「大きな成果を出したので『プラス4』です」
すると、1年間でトータルは「プラス4」という点数になります。
しかし、評価にゼロがあると思っている部下は、次のような誤解をします。
・1回目「今回は『プラス3』だな」
・2回目「全然ダメだったから『ゼロ』だ」
・3回目「今回も良くなかったから『ゼロ』だな……」
・4回目「よし、大きな成果が出たから『プラス4』だ!」
こうすると、トータルで「プラス7」になります。
ここにお互いの意識のギャップが生じます。
「ダメだった=ゼロ」としてしまうと、ダメで当たり前であり、現状維持してもいい感覚になる。
これはとても危険な考えです。
マイナスの人にマイナス評価をつけて、「このままではマズい」ことを認識してもらいます。
その認識の瞬間は、まさに「数値化の鬼」になってもらうのです。
別に、その人の人格や人間性がマイナスなわけではありません。
この先の成長を信じているからこそマイナス評価を与えられるのです。
マイナスの人の給料を下げるぶん、貢献してくれた人にはプラスの給料を与えることができます。
その原資にしたほうが、組織全体はうまくいきます。
経営者から見ても、極めて健全な状態だと思います。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。