全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

【3000社の会社を見てわかった衝撃の結論】仕事ができない人が使ってしまう言葉・ワースト1Photo: Adobe Stock

「目標」とは「地図」である

 質問です。

 あなたは会社から与えられた「評価項目」を瞬時に思い出せますか?

 どうでしょう。

 もし、「確認しないと思い出せない」というのなら、かなりマズい状態です。

 なぜなら、あなたにとって大事な目標が、新年の抱負と同じようになっているからです。

 目標を立てた後1~2週間は覚えていて、ひと月も経てば忘れるような状態と同じだからです。

 そうやって失敗は繰り返されます。

「目標を覚えていないのに日々の仕事をしている」という状態は、地図を持たずに目的地に向かってウロウロしているようなものです。

 では、なぜ、そうなってしまうのでしょうか。

 それは、評価項目の数が多かったり、概念が曖昧だったりするからです

 一般的なコンピテンシー評価は、

「積極性」「判断力」「協調性」「計画性」「創意工夫力」「コミュニケーション力」……

 などの項目が設定されていると思います。

 それらを「1~5」の5段階で感覚的に選ぶような評価ではないでしょうか。

 しかし、考えてみてください。

 積極性やコミュニケーション力といった曖昧なことを常日頃からすべて考えている人なんて、この世にいるのでしょうか?

「○○力」という概念は、無理やり数字っぽく見せかけた不自然なものです。会社が利益を上げることと直接的に関係があるかどうかも怪しいのです。

 仕事ができない人は、こういう「○○力」という言葉を使いがちです。

 私たちが見てきた3000社以上の企業では、その曖昧な評価項目が10項目や20項目、中には30項目を超えるところもありました。

 おそらく、トップの経営者ですらも全項目を記憶していないでしょう。

 1つの期が終わり、上司が評価を入力するタイミングでようやく、「ああ、そういえばこんな評価だったっけ」と思い出すのが関の山です。

 はたして、こんなもので正しく評価し、次の行動につなげることができるのでしょうか。

 目標を思い出せないような人は、いい仕事ができるわけがありません。

思い出せる目標は「5つ以内」

 私たちの考えでは、評価項目はシンプルに「5項目以下」に絞ることを推奨しています。

 ちなみに私の会社では、評価項目が「1個だけ」という社員もいます

 しかも、すべて「売上」「回数」「タスクのポイント化」など、第三者が見ても明らかな数値だけです。

 そうすることで、3つのメリットが得られます。

 1つは、上司と部下の間で認識のズレが生じないこと

 2つ目に、多面評価の必要がなくなり、確定する時間を大きくカットできること

 評価の確定に1~2ヵ月もの時間をかけている企業もありますが、私たちの考えでは期が終わった瞬間に評価を確定させることができます。

 そして、3つ目が特に重要なのですが、社員全員が目標を記憶できること。5つ以下の数値化された目標であれば、すぐに思い出すことができます。

 目標が頭に入っていて、一瞬で思い出せる。だから、すぐに行動に移ることができ、行動量が増えるのです。

 プレーヤーのみなさんは、「今の会社だと評価項目が多すぎて、どうすればいいんでしょう?」と思うかもしれません。

 その場合は、一度、上司と面談の時間をつくってみて、「私が達成すべき数値は何なのでしょうか」と確認してみてください。

 あなたの仕事の中で、会社の利益に直接つながる項目が何なのかを、上司とのあいだですり合わせるべきです。

 数値化の鬼と化して、いったん会社の利益につながることが何かを考える。そのクセをつけるようにしてください。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。著書に、17万部を突破した最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)、36万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。