いつ走るか公開されていないため、「見たら幸せになる」ともいわれる新幹線の点検専用車両のドクターイエロー。昨年には運行20周年を記念してセイコーが限定モデルのウオッチを発売したところ、鉄道ファンの間で大きな話題となった。ドクターイエローはなぜ大人たちも魅了するのか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
見れば幸せになる
ドクターイエロー
古くから黄色は幸せや愛、思いやりなどポジティブな意味合いの色だと考えられてきた。半世紀前にヒットした日本映画「幸福の黄色いハンカチ」も、原作はアメリカの新聞に掲載されたコラムだったそうだ。そんな黄色をまとった「幸せの黄色い新幹線」が、東海道・山陽新幹線を走る923形「ドクターイエロー」だ。
これは高速走行しながら設備点検をする保守作業車で、7両編成のうち、1~3、6号車が電車に電気を供給する電線や信号装置などの状態、4号車はレーザー光線を用いてレールの変位などを検測する機能を持つ。
開業時に配備された922形T1編成(ただしこちらは電気関係の測定のみ行った)に始まり、1974年に代替わりしたT2編成、1979年に増備されたT3編成があり、現在運行されているのは2000年にデビューした923形T4編成と2005年に増備されたT5編成の2編成だ。その役割から新幹線のお医者さんという意味を込めてドクターイエローの呼び名が誕生した。
当然ながら一般人は乗ることができない。検測は東京~博多間を一括して行い、「のぞみ」が走行する線路の検測が10日に1回程度、「こだま」が走行する線路の検測が数カ月に1度程度行われているが、いつ走るかは公開されていない。そのためドクターイエローを見たら幸せになるという「伝説」が生まれた。