営業、説明会、発表会……。社外プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、プレゼン資料の作成に多くの手間と時間をかけているにもかかわらず、思うような反応が得られずに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで役立つのが、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。本書では、「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、説得力のあるプレゼンをするために、テクニックよりも圧倒的に大切な「最重要ポイント」について解説しました。
説得力を生み出すプレゼン資料をつくる方法
プレゼンはわかりやすくなければなりません。
では、わかりやすいプレゼンとは何か? シンプルなロジックで展開されるプレゼンです。「ロジック(論理)」などという言葉を使うと、小難しい印象をもたれるかもしれませんが、何も難しいものではありません。
なぜなら、ほとんどのビジネス・プレゼンは、下図のロジック展開に沿って行うことで、わかりやすく説得力のあるものになるからです。
「1 課題」「2 原因」「3 解決策」「4 効果」の4つが、この順番に並んでいること。そして、それぞれが「なぜ?」「だから、どうする?」「すると、どうなる?」という言葉でつながっていること。このロジックを組み立てられれば、ほぼすべてのビジネス・プレゼンに対応することが可能です(詳しくは、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』『完全版 社外プレゼンの資料作成術』をご参照ください)。
「念い」の弱いプレゼンは結果を出せない
ただし、これだけでは足りません。
いくらロジカルなプレゼンをしても、その根底に確固とした「念い(おもい)」がなければ、本当の意味で相手の心に響くことはないからです。
「念い」という文字を見慣れない方もいらっしゃると思いますが、この文字を使うことに意味を込めています。
「おもい」には「思い」「想い」「念い」がありますが、それぞれ意味合いが異なります。「思い」とは「頭で考えること」、「想い」とは「心に芽生える気持ち」。一方、「念い」には「絶えず気にしていること。強い気持ち」という意味があります。
つまり、すべての言動の根底に一貫している「おもい」のことを「念い」と書くのです。「企業理念」という言葉に、「念」の文字が使われているのも頷けると思います。
この「念い」が本物でなければ、どんなに凝ったプレゼン資料をつくっても、どこか心に響かないプレゼンになります。相手が、心の底から納得することができないのです(下図参照)。
「説得力」を生み出す根源とは?
極端な例ですが、こんなケースがありました。
私が主催しているプレゼン・スクールの受講生に健康食品の販売会社の社長さんがいました。その会社が扱っている商品は、優れた効能をもっていましたが、それを効果的に伝えるプレゼンができずに悩んでいたのです。
私は彼と一緒に、資料全体の構成やスライドの作り方についてさまざまな修正を加えたうえで、彼にプレゼンを実演してもらいました。しかし、プレゼン資料は随分とよくなったのですが、彼のプレゼンにはどういうわけか「説得力」が感じられなかったのです。
そこで、私は彼に「あなたは、どういう念いをもって、この商品を売ろうとしているんですか?」と尋ねると、彼は「お金を儲けるためです」と応えました。正直な「念い」なのかもしれませんが、それでは、どんなにスライドに工夫をしても、絶対に第三者に納得してもらうことはできません。
だから、私は重ねてこう尋ねました。「お金持ちになりたいのなら、この商品でなくてもいいんじゃないですか?」。もちろん、彼は答えに窮しました。そして、改めて創業当時の「念い」を思い出した彼は、「お客様の健康を守りたい」と言い直したのです。
これが、よいプレゼンをする第一歩です。誰が聞いても納得できる「念い」を根っこにもったとき、はじめてプレゼンのテクニックは活きてくるのです。
そして、プレゼン資料をつくるときだけではなく、日ごろからその「念い」を大事にしてください。それを継続することで、必ず、その「念い」は強くなります。“たどたどしいプレゼン”であったとしても、その「念いの強さ」は、必ず聞き手に伝わります。「念い」のある人であることこそが、聞き手の共感を得る最大のポイントなのです。
(本稿は、『完全版 社外プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)