抗うつ薬による治療には、2種類の方法がある。

 清水医師によると、多くの心療内科では、抗うつ薬を既定された最大量投与し、早期にうつ状態を改善することで、まずは患者さんに良くなったと実感してもらい、やや精神的に上がり過ぎだと判断したり、副作用で過食気味になってきたりした際に、徐々に減量して適量に持っていくなど、いわゆる“上から適量を見極める”治療が行われているという。

「患者さんを一刻も早くうつ状態から解放してあげたいという医師の心理からか、こうした方法がとられるケースが多いように思われます。

 しかし、この方法だと一気にうつ状態から解放され、精神的に上がり過ぎて躁(そう)状態に変わる際(躁転)に、本来うつ状態の患者さんが潜在的に持ち合わせている自殺願望が強調され、自らの命を絶ってしまうリスクもあり、来院時の患者さんの状態や問診からだけでは、その見極めが難しいという難点があります。

 特に、片頭痛持ちの患者さんの場合には、こうした症状が起きてしまう可能性が高いので、注意が必要です」

 そうした観点から、清水医師が勧めるのは、“下から抗うつ薬の適量を見極める”方法だ。

「要するに、少量から開始し、徐々に投薬量を増量していき、適度にうつ状態を改善するところで投薬量を決める方法です。

 ただこの方法だと、初期には患者さんの十分な満足度が得られず、時間がかかるという難点があります。しかし、精神的に上がり過ぎて躁状態になるリスクも低く、副作用も少ない、時間がかかるが安全な方法と言えます」