日本一多忙な頭痛専門医が、殺到する患者の「脳波診断」にこだわる理由清水俊彦医師。1日当たり200~300人もの患者を診療する「頭痛専門医」だ Photo by Motokazu Sato

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第42回。1日当たり200~300人もの患者を診療する“日本一多忙な頭痛専門医”、清水俊彦医師を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

紹介された緊張型頭痛の患者は
危険な「椎骨動脈解離」だった

 1日当たり200~300人もの患者を診療する“日本一多忙な頭痛専門医”、清水俊彦医師。「そんな大人数を診ていたら患者1人にかける時間は1分ちょっと。いわゆる“3分診療”でも短過ぎるのに1分だなんて。相当いい加減な診療なんだろう」と疑いたくなるかもしれないが、時間をかけるべき患者にはかけ、頭痛をちゃんと診るだけでなく、小さな異常、特に生命に関わる重篤な疾患は見逃さない。

「先日も提携先のクリニックから、『3週間前から片側後頭部の痛みを訴えている。MRIを撮ったが異常は見つからないので緊張型頭痛と診断し、鎮痛剤と緊張を緩和させる薬を処方したが、まだ痛みがあると言っている』という患者さんが紹介されてきました。

 それでMRIを撮り直してみたら椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)でした。動脈解離とは一番内側の内膜に傷がついて、そこから血管の壁の中に血液が入り込み、血管が裂けていく状態です。椎骨動脈は首の骨の中にある動脈で、解離が進むと脳梗塞やくも膜下出血を起こし、亡くなる危険があります。

 患者さんには急いで女子医大(東京女子医科大学)病院を受診してもらい、幸い、事なきを得ました。

 片側の後頭部の痛みで一番怖いのは頸動脈解離なので、そのつもりで注意深く見る必要があります。でも、MRI画像を見慣れていないと分からないんですよね。一般の専門外の先生には無理かもしれません」(清水医師。以下カッコ内は同)

 経験と脳の状態を把握するスキルを駆使し、清水医師は年間200~300もの患者の重篤な疾患を発見し、東京女子医大での外科手術に送り込み、生命を救っている。