相続後にも打つ手はある!
適用できる控除や特例

 相続税対策は、親が元気なうちに行うべきだが、なかなか思い通りにはいかないこともあるだろう。生前対策しないうちに相続が発生してしまい、住む人のいなくなった実家を「さて、どうしよう」となったら……。冒頭で述べたように、相続登記の義務化が施行される以上、放置するわけにはいかない。

 もちろん、空き家となった実家を相続した場合に適用できる控除や特例は残されている。

●空き家となった実家を売る場合
 実家を現金化し、相続人で分配しようということになったら、実家の売却という方法を選択することになるだろう。この場合、「相続空き家の3000万円特別控除」が適用可能だ。16年4月1日~23年12月31日に売ることができ、一定の要件に当てはまれば、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除できる。

 とはいえ、相続税の申告期限は相続開始から10カ月である。期限までに実家が売却できなくても、いったんは法定相続分で分割したとして、相続税申告・納税しなければならない。たとえ相続人全員が相続を放棄したとしても、相続財産管理人が決まるまでは、相続人に空き家の「財産管理義務」は生じる。固定資産税も発生する。

●空き家となった実家を貸す場合
 空き家となった実家の立地条件によっては、賃貸物件化という方法もある。賃貸方法に応じて増改築や建て替え、家屋解体や整地など費用をかけて物件価値を上げる必要があるかもしれない。

 しかし、民間の空き家・空き室を高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅確保に活用するという目的で、17年10月から国土交通省が主体となって「住宅セーフティネット制度」が開始された。この制度を活用すれば、以下の改修費の補助が受けられる。

(1)耐震改修
(2)間取り変更
(3)シェアハウスへの改修
(4)バリアフリー改修
(5)居住のために最低限必要と認められた工事
(6)居住支援協議会等が必要と認める工事
(7)これらに係る調査設計計画の作成

 最近では、コロナ禍でのテレワーク普及により、移住支援金制度などを利用して、都市部から地方へ移住する人たちも増えている。「セカンドハウス特例」などを設けている自治体もあるので、週末や毎年一定期間を過ごす「セカンドハウスとして空き家となった実家を利用する」選択肢もある。

 また、23年4月27日から施行される「相続土地国庫帰属法」により、「国に引き取ってもらう」という選択肢もある。ただし、かなり条件が厳しく、手続きも複雑で、承認申請が却下される場合もあり得るとのことで、この制度の利用はかなりハードルが高いといえる。

 文頭で相続土地の概算方法を案内したが、実際に相続税を申告・納税するに当たっては、土地の形状や周囲の環境で評価額の算出方法は異なる。さらに、被相続人の配偶者が存命であれば、二次相続についても考慮して、適用できる特例や控除を選択しなければならない。

 税理士でさえ、相続土地を扱った経験や知識が不足していれば、評価方法を誤ることがあるほど複雑だ。相続税の過払いに気づいたら、還付の手続きや相続税に詳しい税理士のセカンド・オピニオンも可能なので、相談されることをおすすめする。