家族で話し合うべき相続問題写真はイメージです Photo:PIXTA

毎年7月1日、国税庁が公表する「相続税路線価」。2022年分は全国平均が2年ぶりに0.5%上昇した。新型コロナの感染状況が気になるところだが、この夏、久しぶりに家族が顔を合わせたら、ぜひ話し合っておきたいのが「実家の相続」についてだ。(税理士、岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

実家の相続税対策は
親が元気なうちに

「両親もまだ元気だし、相続なんて先のこと」と思うかもしれない。しかし、親が健在なうちでないと、打てない相続税対策は多い。今や日本の65歳以上の認知症有病者数は6人に1人。万一、認知症を発症すると法律行為が禁止され、遺言書を作成しても無効の可能性が高く、確認したいこともできなくなる。

 日本の相続財産のうち、トップを占めるのが土地・家屋といった不動産だ。もちろん、マンションの区分所有も含まれる。預貯金などの分けられる財産ばかりならいいが、むしろ遺産は実家しかなく、息子や娘などの法定相続人が複数いる場合、不動産は分割しにくい財産なのでもめやすい。

 しかも、所有者不明土地の解消へ向けて、2024年4月1日から「相続登記の申請」が義務化される。相続によって不動産を取得した相続人は、相続の取得を知った日(あるいは遺産分割が成立した日)から3年以内に登記申請しなければならない。怠れば、10万円以下の過料が科せられる。

 注意したいのが、親が所有する不動産が実家だけでなく、例えば、いわゆる「先祖代々の土地」などを親族と共有している場合だ。相続すれば、こちらにも登記義務が及ぶ。その存在自体を知らず、相続が発生してから慌てる相続人も多い。登記だけでなく、もちろん、相続税の課税対象となる。

 そういった共有不動産では、相続が繰り返されるうち、共有者の所在が不明となるケースも多い。そこで、23年4月1日からは、他の共有者が地方裁判所に申し立て、決定されれば、所在不明の共有者の持ち分取得や、その持ち分を含めた不動産全体を第三者へ譲渡することが可能になる。実家以外にも親所有の不動産がないか確認しておきたい。