長きにわたる不動産バブル膨張
「三つのレッドライン」導入後の誤算

 中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。長い期間にわたって、中国では不動産バブルが膨張した。根底には、共産党の経済政策があった。

 共産党指導部は地方政府に経済成長目標を課す。達成のために地方の共産党幹部は土地の利用権を中国恒大集団(エバーグランデ)などのデベロッパーに売却する。それは地方政府の主要財源となった。デベロッパーはマンションを建設する。建設活動の増加が、雇用を生み出し、建材の需要も増える。インフラ投資も加速する。

 そうして地方政府はGDP成長率目標を達成し、幹部は出世を遂げた。中国全体で「党の指示に従えば豊かになれる」という価値観が形成され、「不動産価格は上昇し続ける」という神話が出来上がった。さらに、リーマンショック後は世界的なカネ余りが価格上昇を支えた。上がるから買う、買うから上がる、という根拠なき熱狂が不動産バブルを膨張させた。

 しかし、いつまでも価格が上昇し続けることはない。2020年8月、共産党政権は「三つのレッドライン」を導入。金融機関は不動産デベロッパー向けの融資を減らし、デベロッパーは資産売却による資金捻出に追い込まれた。そうすることで共産党政権は経済全体での債務残高を削減し、資産価格の過熱を解消しようとした。

 問題は、三つのレッドラインが想定以上の負の影響を経済に与えたことだ。急速な融資規制は神話を打ち壊し、不動産バブルは崩壊した。それ以降、売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖が止まらない。

 エバーグランデなどは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。不良債権問題が深刻化し始めている。