生徒と教師写真はイメージです Photo:PIXTA

子どもが好きで、誰かの役に立ちたい。そんな思いを抱いて教師になったはずなのに、なぜ学校では感情を抑えきれない教師がいるのだろうか。公認心理師の川上康則氏は、その背景には教師個人の性格だけではなく、上から次々と新たな対応や負荷を求められ続ける学校現場特有の構造があると指摘する。※本稿は、公認心理師の川上康則『教師の流儀 正解のない問いを考える』(エンパワメント研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

怒りの沸点が低い人には
向いていない職業

 教師という仕事は「感情労働」という側面が強いと言われています。

 感情労働は、肉体労働や頭脳労働に続く第三の形態です。その最大の特徴は、人と直接的に接することが生業だということです。

 学校は、人がいなくてははじまりません。子どもたちへの指導はもちろんのこと、保護者や関係機関との協力や連携が欠かせません。同僚教師との協働関係、先輩への気遣いや後輩へのOJTなど、常に人との関わりが不可欠な仕事です。

 人の悩みの大半は人間関係から生まれます。したがって、人と接する仕事には感情を揺り動かされる事態がつきものです。教師という仕事にも「感情の抑制、忍耐、緊張感」が常につきまとうものなのだと理解する必要があります。言うなれば「自らの感情を制する者は、教室を制す」です。

 教師のメンタルケアを論じる際に、しばしば、怒りの感情のコントロールを目的として「6秒間こらえること」「深呼吸すること」「いったんその場を離れること」などが語られることがあります。たしかに、それらの方法を瞬時にとれることは大切なことだと思います。しかし、それらは全て対症療法にすぎません。