コロナうつが増えたと感じるようになったのは、2021年に入ってからです。世代別に見て、割合が高いのは高齢者。感染や重症化のリスクが高いと判断され、家に閉じこもる生活を強いられた方も多く、元気がなくしゃべらなくなった、体が衰弱したといった相談を本人や家族から受けることが多くなりました。

 うつ病かどうかを見分けるのは、たとえ家族であっても至難の業です。うつになると「死にたい」という言動が増えると言われますが、元気がなくなるだけ、食欲がなくなるだけのこともあります。家族に兆候を感じたときは、言葉だけを信じず「体重が減っていないか」「夜中に何度も起きていないか」など、以前と比べての行動の変化を観察してみてください。他の病気もそうですが、うつ病もまた、早期発見・早期治療が回復のカギです。プライドから病院に足を運びたがらない人もいますが、家族の様子がおかしいと感じたなら、「点滴打ってもらおうか」などと言いながら、早めに医者に連れていくのがいいでしょう。

 今年の夏はただでさえ暑く、外に出たがらない人も多い。ここから感染者が増えて、行動制限や自粛が呼びかけられると、引きこもる人はさらに増えてしまうでしょう。せっかく戻ってきた飲食店の客足も、再び引いていくことになってしまう。そうなると経営者側の経済的な不安感も増していきます。特に、自分に対する要求水準が高い人は、「稼げない自分はみじめ」と感じてうつ状態になってしまいやすいですね。外に出られないという点でも、心理的、経済的な不安が増していくという点でも、うつ状態の方は増えていくのではないかと思います。もし本当に行き詰まったとしても、生活保護であったり、自治体の補助金であったり、生き延びる手段はありますから、頼れるものには頼ってほしいと思います。

週刊朝日  2022年8月5日号

AERA dot.より転載