これにM&Lは反論。「この表現は不正確で、金融会社だけを記載すべきだと口頭で抗議したにもかかわらず、それでも書類にサインした」と言います。これにサザビーズ側は、「この問題が提起されたことはない」と反論しています。

 控訴裁判所は今月、書類の裏にある「細かい字」に注目し、「M&Lはダイヤモンドを(サザビーズに)渡し、(サザビーズの専門家に)それらがM&Lのものであると伝え、委託販売を見込んでサザビーズに鑑定してもらうためにそれらを残した」と判断しました。

「サザビーズがM&Lのために間違いなくダイヤモンドをオークションにかけるという合意はまだなかったが、オークションの可能性がサザビーズの関与のポイントだった」と主張、そしてさらに「サザビーズがこの契約に違反して、ダイヤモンドを『赤の他人』に渡した」と続けています。

 サザビーズの広報担当者は「CNN Business」の取材に対し、「回収した人物はジャデル社の正規代理人だった」と反論。「委託者は定期的にサザビーズに代理人への引き渡しを指示しており、今回も引き取り時に代理人が必要な身分証明書を提出した」と述べました。またサザビーズは、「訴状にある申し立ては根拠がなく、真実でないことや誤った表現に満ちていると考えている」「われわれは法廷で精力的に弁護を続ける」と声明を出しています。

 友人関係にある人物の間で、電話一つでビジネスに関わる代理人を立ててしまうこともそうですが、400万ドルもの宝石を顔も知らない人物に手渡すこと自体、プロ意識に疑いをもたざるをえません。

 しかしながら、世界最高峰とも呼べるルーヴル美術館の館長にもなった人が5000万ユーロもの出所が怪しい美術品の売買に関わってしまったことを考えると、一般的には想像もできないほどの“いい加減さ”を極めたビジネスがなされているのかもしれません。いやそれとも、その逆の“丹念さ”を極めた欲望でビジネスが…そんなことがないことを祈っています。

Text by Oh Ryoko

ルーヴル美術館が「盗品購入疑惑」で元館長ら拘束、アートビジネス界に激震