SNS上でしばしば巻き起こる炎上や誹謗中傷。なかには「怒り」のままに攻撃的な投稿をしてしまい、取り返しのつかない結果に陥ることもあります。怒りによる行動の多くは、恐怖や不安の裏返しであることが少なくない、とハーバード大学医学部准教授の内田舞氏は言います。自分や他者の心を守るために、ネット上の「怒り」とどう付き合うべきなのでしょうか。※本稿は、内田舞『リアプレイザル 不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を抜粋・編集したものです。
「怒り」による行動の多くは、不安や恐怖の裏返し
暴力やパワハラ、あおり運転、SNSでの炎上など、「怒り」を発端に起こるトラブルは少なくありません。怒りをコントロールできないと、表現の仕方によってはその場のシチュエーションがさらに悪化することがあります。
怒りを感じること自体は悪いことではありませんし、どんな感情も抱いていい感情です。怒りが必ずしもマイナスな影響を及ぼすとも限りません。何か不条理だと感じることがあって「許せない」「状況を変えたい」と思った。だから、相手にその思いを伝えた、あるいは社会に働きかけるための活動を立ち上げたといった場合には、怒りがいいことをする原動力になったと言えます。
とはいえ、怒るにもかなりのエネルギーを使います。へとへとになってしまう前に「怒りの背景に何か物語が隠れていないだろうか?」と、視点を変えて向き合ってみることが大切です。
これまでの体験の中で、他人に傷つけられたり、怖い思いをしたりしたという経験はないか考えてみましょう。「また同じように傷つけられるんじゃないか」といった、再び傷がえぐられるような恐怖。あるいは誰かに傷つけられたときに自分を守れなかったという後悔の念。
そうした感情が、自分に対してフェアではないことが起きたときに、怒りとなって湧いて出てくることがあります。怒りによる行動の多くは恐怖や不安といった感情の裏返しでもあることが少なくありません。
また、過去の経験から生じる不安が思わぬタイミングで怒りとして出てきてしまって、必要のない場面で誰かを傷つけてしまうこともあります。
ですから、自分の心を守るにはいったん立ち止まって、背景にある正直な思いや自分がしてきた経験に向き合うことが大切です。
ソーシャルメディア(SNS)は私たちに今まで以上に情報を届けてくれ、人々とのつながりを持たせてくれるツールです。
しかし、それと同時に、私たちの精神面を悩ます現代の病因の一つでもあります。個人が特定されにくいこともあり、面と向かって言えないようなことも大胆に発言できるという特徴がありますし、逆に一対多の活字のコミュニケーションの中でお互いの意見のニュアンスが理解されずに会話が思わぬ方向に進んでしまうこともあります。
また、人のさまざまな面を見ることができる対面での交流と違って、投稿主が「見せたいもの」しか見えないという点で、要らぬ劣等感や嫉妬を生む場でもあります。