奥井亮氏奥井亮氏 Photo by T.U.

奥井 とはいえ、人に覚えていてもらうためには、結局は「偉大な成果を出すこと」が重要だと私は思います。なぜ多くの人がロナウドを覚えているか、知っているか、というと、得点王やバロンドールを取っていることもあると考えています。田中選手は、選手としてどのような結果を残したい、という目標はお持ちですか。

田中 得点のように目に見える結果は分かりやすいですね。ただ、僕はミッドフィルダーなので、別の形で結果を残さなければいけません。僕がいるかいないかでチームの雰囲気が変わる、僕がいればチームが勝てる、他の選手が僕とサッカーをしたいと思ってくれる。そういう存在になりたいです。

奥井 今までのご自身のキャリアを振り返って、分岐点やブレークスルーのようなものがあれば教えていただけますか。また、今後の分岐点になりそうなものはありますか。

田中 僕、挫折もブレークスルーもないんです。毎日やっていたことが、ある日たまたま花開いた、ということの繰り返しなんです。

 結果が出ると、周囲の人は「田中は一山越えたな」と感じるのかもしれません。でも、僕自身の中で大きな変化はない。毎日の延長線なので。同じことを毎日やっても、すぐに芽が出る人もいればそうでない人もいます。僕は、なかなか芽が出ないタイプの人間です。やっている内容は、これまでとそれほど変わりません。

奥井 「将来こうしたい」というものを明確にイメージして、その将来を想定しながら今やるべきことに着実に取り組むということですよね。足元で取り組むべきことをやり続けること、そしてその成果が将来につながっているイメージを持ち続けることが重要なのは、ビジネスでも共通していると思います。米アマゾンの創業者、ジェフ・べゾスも「今の結果は2~3年前にやっていることの成果が出ているだけ」という趣旨の発言をしていました。

 また、お話を聞いていると、ご自身の「良さ」を的確に把握していらっしゃる方だなと感じます。自分の良さや武器みたいなものは、変化していくのでしょうか。

「ようやくサッカーが仕事になってきた」
感じた目標に向かう楽しさ

田中 自分が持っている武器は、大きく変わることはありませんが、クラブやプレーする国によって多少は変えていかなければなりません。

 例えば、僕は日本にいたときはたくさんボールを触ってゲームを作ることを意識していました。でも、移籍したデュッセルドルフでは、ゲームを作ることはそれほど求められない。10本のパスを10本通すことよりも、9本のパスをミスしても、確実にゴールにつなげるパスを1本通すことが求められていると気付きました。そこに対して、頭や技術を使うようになりましたね。