ポイントを使うために消費、の繰り返し

 2019年に実施されたキャッシュレス推進のためのポイント還元事業を振り返ると、その目的は消費喚起だった。対象となる店舗・サービスでキャッシュレス決済をすると最大5%のポイントが付与される政策で、まずお金を払って消費をし、それに対して還元されたポイントでさらに消費をしてもらうという消費循環を作ろうとしたわけだ。ポイントを消費するために、欲しいものがなくても無理に買い物してしまう人は少なくないだろう。

 これは、我々が抱える「もったいない心理」をつくものだ。せっかくもらったポイントをムダにするのはもったいない。期限が切れますと言われれば、絶対使いたくなる。

 そうして律儀に新たな消費をし続けてしまうと、なかなか貯蓄にまでお金は回らないだろう。

 消費の無限ループから抜け出すには、頭の中でポイントを円換算するに限る。1ポイントが1円相当なら、期限が切れる100ポイントは100円だ。100円も大事だが、それを消費するために1000円以上の買い物をするのはもっともったいないではないか。冷静に判断しよう。

家族に家計が把握されにくく、浪費の温床に

 食費や光熱費、通信費など生活費をキャッシュレスで払っている家庭は多いだろう。ただ、カードやスマホ決済はあくまで利用者個人にひも付いているため、全体でどのくらいの支出になっているのか、他の家族には見えにくい。生活費も個人の支出も同じカードで払っていたりすれば、その内訳をすべて夫あるいは妻に見られるのはちょっと…という心理も働く。ちゃんと支払っているのだから問題ないという論理になるわけだが、家計費の全容がはっきりしないまま――ということになりかねない。

 生活費をキャッシュレス払いにすること自体は悪くないのだが、どこまでが家計費でどれだけ個人の小遣い分が混じっているかを明確にしないと、そこが浪費の温床になる。個人の小遣いは別に専用口座を作り、カードも家計費分を分けるのが理想だが、難しければ夫婦間で支出の情報開示に取り組むしかない。