7月に米国の物価上昇ペースが和らいだことを示す指標を好感し、相場は上昇した。それでも物価はまだ居心地の悪いほど高く、投資家は一服するどころではない。米労働省が10日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比での上昇率が8.5%と6月の9.1%から鈍化し、市場予想を下回った。主な要因はガソリン価格の下落だ。AAA(トリプルエー)によると、レギュラー無鉛ガソリンの全米平均価格(1ガロン当たり)は1カ月前の4.68ドル(約622円)から、足元では4.01ドルに下がった。ガソリン先物の下げ幅はさらに大きく、今後の小売価格の下落を示唆している。食品とエネルギーを除いたコアCPIの前年同月比での上昇率は5.9%で6月から横ばいだった。エコノミストや米連邦準備制度理事会(FRB)の政策立案者は商品(コモディティー)価格が大きく変動しがちな点を認識しており、コア指数を重視する傾向がある。そうはいっても、消費者心理とインフレ期待に大きな影響を及ぼすガソリン価格を度外視することはできない。インフレ期待が制御できなくなれば、1970年代のように賃金と物価が相互作用的に上昇する賃金・物価スパイラルが発生しかねない。